melancholia//サイトの更新履歴兼、その時々のプレイゲーム日記、二次文章など。
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2012/05/03 (Thu) ドラマダ文章 / トリ誕!

トリップちゃん誕生日おめでとう!
ということで、二日間くらいで書き殴った文章をこちらにも。
低クオリティもいいかげんにしろという出来栄えではありますが、もしご興味おありでしたら追記から。
前半部分のウイトリ会話は書いてて結構楽しかったです。


しかしその、ドラマダ文章は初めて書いたわけなのですけど、台詞廻しがすごく、難しいです、ね。
結構自然なワカモノ口調っぽいので、あれがなかなかわたしにはちょっと難しい。
ジュブナイル系の登場人物であれば口調の中にも記号的な部分があるので(例えば壇なら『ェ』を使うとか)それさえ抑えておけば最低限のラインは何とかなるのですけど、ドラマダはあまりそういうのがないので……
その点、ノイズとかクリアなんかは比較的やりやすいんだろうけど……
ものすごく久し振りにジュブナイル系以外の文章を書いたので、色々と勉強になりました。うむ。
あと、元々BLものなわけですから、このあたりの匙加減も何となく難しいんですよね。
多大なる妄想力を行使して無理矢理ホモにする、っていう方向じゃないわけで。
まあその、持ってくる時期によってはまだホモじゃなかったりもするのですけど……このあたりはわたしの先入観の問題なのかなあ。


と、まあそういうわけで、またぼちぼち頑張ります。
とりあえずトリップの誕生日に間に合わせられて本当に良かった。
こういう記念日的なものは毎度必然的に締め切りが設けられてしまうので戦々恐々です。
完全オン創作の人間なので締め切りに慣れていないのですよね……
来月に最愛であるノイズの誕生日がありますので、これも出来れば何かしたいのですけどまだ未定です……

というか壇、壇……う、うう……









『五月三日』







瀬良垣蒼葉からメールが届いたのはその日のちょうど昼前のことだった。


この日、朝からトリップとウイルスがこなしていたのは、恒例の見廻り業務とライマーたちへの牽制である。
ライムの開催を一手に担う卯水は本当に神出鬼没で現れる場所も時刻もまちまちだったから、夕方過ぎばかりではなくこうしてそれが朝に当たるようなことも時折あった。
ひとえに若さゆえのことなのか、はたまた電脳空間での戦闘がそれほど魅力的なのか。ライマーたちの過熱ぶりは近頃少々眼に余る。熱狂的な空気に酔った観戦者同士がふとしたきっかけを得て暴れ出し、しかも刃物さえ持ち出す始末なのだ。乱闘騒ぎ程度のものなら結構だが、死者まで出されるのは頂けない。旧住民地区に適度な平穏を保っておくことは、碧島のやくざとしても、そして東江辰男の手足としても、重要な事柄なのである。
はしゃぎ過ぎる者が居るのなら、その時は速やかに退場して頂かねば。

それらの業務が一段落した時である。
トリップのコイルが小さな音をたてた。メールの着信だ。
上司である東江からの指令かと思い、トリップは湧き上がる欠伸をそのままにメール画面を呼び出したのだが。

「、……」

送信者の名を眼にした途端、思わず欠伸を噛み潰した。
二、三度読み直してみても結果は同じ。そこには蒼葉、との表示がある。紛れもなくこれは蒼葉からのメール、であるようだ。
こちらから送れば返すけれどそれ以外にはほとんど送ってこない、というのが彼の常なのだが。
そう思いながらトリップはウイルスの方を見たが、彼のコイルには着信したような様子がない。ということは。蒼葉は自分にだけメールを寄越したのだろうか。いつものように自分とウイルスそれぞれに、ではなく。

「…………」

それは尚、珍しい。
届いた短い文面にさっと眼を通し、トリップは素早く画面を閉じる。

「次の仕事の話か?」

甚だやる気のなさそうな警官との軽い世間話を終えたウイルスが、こちらを振り返り訊ねてきた。
メールを読んでいたことには気付いていたらしい。

「いんや……、その日ごとの報告をちゃんと上げなさいよっつう釘刺し。 テキトーにしてんのがバレたんでしょ」

一瞬も言い淀むことなくそう応えた。
長い付き合いなのだ、相手の『力量』くらいは心得ている。が、トリップとて負けてはいない。現にウイルスはトリップの言を何ら疑うことなく受け取ってくれたようで、苦笑混じりの溜息をこぼしていた。

「適当も何も。 報告するようなことが特にないんだから仕方が無いだろうに」
「まあねえ。 面白いことはなーんにもありませんでしたー、っていうのもいちいち報告して来いってことなんじゃないの」
「成程、それは面倒だな」
「だな、メンドクセーし、何より楽しくない」
「全くだ」

ウイルスの反応に合わせて、トリップも同じく肩を竦めてみせる。
東江との遣り方の相違は今に始まったことではなかったので、偽の矛先としては妥当なところだったようだ。功を奏した己の作戦に胸中でほくそ笑み、トリップはごくごく自然な所作でコイルに眼を遣った。

「……とかナントカ言ってたら、もう昼メシの時間じゃねーの」

その言葉にウイルスもつられて自身のコイルを見遣る。

「ああ……そうだな、じゃあそのあたりの店にでも、」
「あ、俺今日はなんか無性にラーメン食いたい気分なんだよね。 そーゆーことってたまにない?、つって……お前はラーメンあんま好きじゃねーから無いか」

ウイルスの嗜好を把握した上でそう言うと、案の定予想した通りウイルスはラーメンという単語に眉根を寄せていた。こう言っておきさえすれば、恐らく妙な詮索をされることなくひとり別行動を取れるはずである。

「……しょうがないな。 判った、午後からは『素材』探しだから一時過ぎくらいまでには戻ってこいよ」
「りょーかい、っと。 んじゃ、そこの裏通りあたりで待ち合わせってことで」

呆れた表情で嘆息するウイルスへひらひらと手を振る。
今はうまく騙されてくれたようだがウイルスはひどく聡い男である、嘘の効力もそう長くはないだろう。合流した後まで一切を隠し通せるほどの自信はさすがにトリップにもなかった。
何しろ、他ならぬ蒼葉が絡んでいることなのだから。





『もし寄れそうなら、昼頃に平凡まで来て欲しい』。
それが、トリップのもとに届いたメールの文面である。

(別に寄れそうなとこにいなくても、蒼葉がそう言うんなら何があろうと絶対行っちゃうけどね)

そう思いながら角を曲がると、『平凡』と大きく書かれた看板の下にきれいな蒼い色が見えた。見慣れた蒼い髪の色。瀬良垣蒼葉だ。

「あーおば」

壁に上体を凭れ掛けさせているその蒼葉へ、トリップが声を掛ける。

「おー、トリップ!」

それまで所在無さげに宙へ投げられていた彼の視線がこちらを向き、自分を見付けた瞬間に笑みがこぼれる。トリップは蒼葉のその変化を、暗記でもするかのようにじっと視界へおさめた。
これは。なかなかに幸せな一瞬だ。

「ごめんな、ほんとはこっちから行ければ良かったんだけどお前ら何処に居んのか判んなかったし……今日は仕事終わったら婆ちゃんの買い出しに付き合う予定だし、で」
「いーよ、俺ら結構ヒマだから」
「そうか?」

申し訳無さそうにしなっていた眉がほんの少しだけ和らぐ。
それを見てこちらの頬も同じく緩んでしまったが、トリップは気にしなかった。幸せなのだから仕方がないのである。

「……つか、あれっ、ウイルスは? お前ひとりなの? 珍しいなあ」

しかし、蒼葉の口にした名が、ぬるく膨らんでいたトリップの幸福感に一滴の冷水を落とす。
自分の中に在る何かの温度があからさまに下がるのを感じながら、トリップは大きく肩を竦めてみせた。

「ひとりなの、って、蒼葉が来いって言ったからわざわざ巻いてきたんじゃん。 なに、蒼葉は二人揃ってた方が良かったの? 俺だけにメールくれたから、てっきり俺ひとりに用があんのかと思って楽しみにしてたんだけどなあ」

冗談半分本気半分でトリップはわざと少し意地悪な言い方をしたが、蒼葉はやはりトリップの胸中を理解していないようで。笑みながら首を横へ振った。

「巻いて、って……いや、うん、まあ用があるのはお前になんだけど、ウイルスが居ても困らなかったっていうか…まあでもいいや、とにかく来てくれてありがとな」
「ま、蒼葉の頼みなら、ってね。 ……で、その用事ってのは何なわけ? デートの誘いとか?」

明るく笑う顔も可愛い、と思いながら当の目的について訊ねると。蒼葉は少し呆れたような、可笑しそうな表情で、自分よりも十センチほど上に在るトリップの顔を見詰めた。

「バーカ。 誕生日だよ、誕生日」
「、え?」
「今日、お前の誕生日なんだろ?」

たんじょうび。
蒼葉と視線を合わせたまま、トリップは数度瞬いた。
蒼葉から投げ掛けられた単語がただただ頭蓋の内に反響するばかりで、トリップの脳はなかなかその意味を理解することが出来ないでいる。
おまえの、たんじょうび。
彼は確かにそう言った。そしてゆっくりと混乱している脳を廻し、今日の日付を思い出してみる。

「あー……、」

成程。
蒼葉の言う通り。
確かに今日は、自分の誕生日だった、ようだ。

「……そうだった。 今日、俺の誕生日だったわ」
「なーんだそりゃ。 お前、自分の誕生日忘れてたのかよ?」

やや呆然としながら頷くと、その様子が面白かったのか蒼葉がくすくすと笑った。

「んじゃ、本人が思い出したところで改めて。 誕生日おめでとう、トリップ」
「……おー、えっと……どうも」

咄嗟に何と応えて良いものか判らず、とにかく頭を下げておく。

「てか俺、蒼葉に誕生日とか言ってたっけ?」
「言ってねーよ、だから苦労したんだろ。 ったく、お前ら、俺に散々たっかいもん贈りつけてきたくせに自分の誕生日のことは全然言わねーからさ……蓮にも頼んですっげえ調べたんだぜ、全く」
「、調べたんだ?」
「そうだよ、お前らんとこのホラ、組関係とかな。 まあ、ちょっとヒヤヒヤしたけど」

蒼葉のような一般市民がいくら調べたところで東江との接点に辿りつくことはないだろう、だからそれについて危惧したわけではなかった。それよりも。いま着目すべき点はそこではないのだ。
まさか、蒼葉がわざわざ手を尽くして調べてくれたとは。
口先のみの虚構ではなく、一応というかたちであっても構成員としての実態を作っておいて本当に良かったと、トリップはその工作をした時の自分とウイルスに対し心の底から感謝を捧げた。

「…………で、これ」

不意にがさりと、腹のあたりへ何かが押し付けられる。
何処かで見覚えのある紙袋だ。

「ん、何? …………あ、もしかしてコレ、俺へのプレゼントってやつ?」
「……そりゃ……、この流れで渡してんだからそれしかねーだろ」

蒼葉は少しぶっきらぼうにそう言って、さっさと視線を外してしまった。

「マジで。 開けていい?」
「、…………いいけど」

返事を聞く前にトリップの指はもう、包装を解きにかかっている。
紙袋に入っていたのは、鮮やかなピンク色のリボンでラッピングされた硬い造りの小さな黒い箱で。その中から現れたものは。

「…………これ……って、」

そっと摘み上げると、それは淡い陽光を受けて鈍い銀色に光っている。
蒼い色を基調にした石が嵌め込まれているようなのだが、トリップはこの色遣いをようく知っていた。

「ネクタイピン、?」
「……そ。 お前ら甘いモン以外何が好きなのかとかよく判んなかったし、いっつもスーツ着てるんなら、まあそういうのもいいのかな、って……」

相変わらず明後日の方向を向いたままそう言う蒼葉の頬は、心なしかほんのりと赤かった。
もしかすると、プレゼントを贈るということにあまり慣れていないのだろうか。

「しかもさ蒼葉、これ、ブレインナッツだよな?」
「……俺、あんまそういうブランドとか詳しい方でもねーから。 自分の好みっつうか、知ってる中から選んじまったんだけど、その、」

蒼葉の視線がうろうろと落ち着きなくあたりを彷徨い、それからぎごちなくトリップを捉える。

「…………まあ、なんだ、その、俺も、気に入ってくれたら嬉しいかな、って、うん」

そう言って、蒼葉がふんわりと照れたような微笑を浮かべ―――
トリップが視認出来たのはそこまでだった。

「あおば」
「っ」

トリップの大きな掌が頭で考えるよりも早く伸びて、眼前に在った蒼葉の身体をぎゅっと強く抱き寄せていたので。

「お、おいっトリップ! ちょ、お前、ここ往来!」

トリップの腕の中で蒼葉は何だか小動物のように暴れている。
頬に触れる蒼葉の耳がとても赤くて、柔らかくて、熱かったので、トリップは思わず唇でそれを食んだ。

「ッ、」

すると途端に蒼葉の身体が硬直する。
全く蒼葉は反応が良くてとても面白い。

「…………さんきゅー蒼葉。 めちゃくちゃうれしい」

唇のおもてを触れさせたまま、蒼葉の耳の中へ直接声を落とす。
その僅かな振動に、蒼葉はぶるりと首を震わせ。大きく息を吐いてから、トリップの背をひとつばしんと叩いた。

「いてっ」
「……馬鹿、大袈裟なんだよ。 俺の方こそこないだはありがとな」

ひどく近い距離で蒼葉が笑う。
その自分にのみ向けられた笑みを瞬きもせずじっと見詰めながら、トリップは考えた。
今までは誰かの誕生日を祝う、ということに関して一片の興味もなかったけれど、蒼葉の為のプレゼントを選ぶのは予想していた以上に楽しいものだったのだ。蒼葉の喜ぶ顔を思い描きながら品を用意するということがまさかあれほど面白いものだとは、トリップは全く思ってもみなかった。その楽しさを充分に満喫していたから、自分の誕生日に何かを返してもらうことなどまるで思い至っていなかったのだが。

(うん、これはこれで)

蒼葉を抱きしめたまま、もらったばかりの小さなネクタイピンを掌で包んだ。
誕生日を調べようと蒼葉がキーを打つ。店で品を眺め、数在る中からひとつを選び、包装を頼む。トリップはその姿を想像してみた。
その時、蒼葉の頭の中に存在していたのは――それは勿論、トリップである。
それらに尽力していたとき蒼葉の中に充満していたのは、他ならぬトリップの存在なのだ。その時だけは間違いなく確かに蒼葉はトリップによって占められていたはずなのである。

「……」

それを思うと、ひどくたまらない気持ちになった。
甘いような、苦いような、そんな痺れがぞくぞくと沸き起こり、トリップの背筋を這い上っていく。
もっともっと自分のことで一杯にしてやりたいと、それ以外の全てのものを蒼葉の中から追い出してやりたいと、強くそう願ってしまう。
とはいえ。もし万一蒼葉を得られることがあるなら、其処にウイルスが居ても構わないとトリップは考えていた。ウイルスと共に蒼葉を共有し、ずっと二人だけで可愛がるのは、きっと何より楽しいことだろう。ウイルスもトリップと同様長らく蒼葉を見詰めてきたのだし、それに、恐らく二人がかりで可愛がる方がよりたくさんの表情を見られることになるのだろうから。だから、トリップは蒼葉を自分ひとりのものにしたいと、そう考えているわけではなかった。
だが。

「…………なあ、蒼葉」
「ん?」
「蒼葉さ。 蒼葉のことだからたぶん、ウイルスにもこうやってプレゼント、するんだろ?」

訊ねると、蒼葉はひとつ頷いてからちらりと通りの方を窺った。
トリップが蒼葉を離そうとしないので、先刻口にしていたように人目を気にしているのだろうか。

「……まあ、そりゃ、な。 あいつにももらっちゃったし……でもウイルスは確か二月だっけ? かなり遠いんだよなあ」
「二月? へー、そうなんだ」
「、そうなんだ、ってお前、まさか知らないとか?」
「ん? ウイルスの誕生日? あー、うん、まあ別にお互いの誕生日祝い合ったりとかしたことないし」
「…………マジか……お前らほとんどニコイチみたいなもんなのに?」
「んー、それとこれとは話が別っつうか」
「……はあ、そんなもんか?」

トリップの言葉に蒼葉は何だか脱力している。
その滑らかな頬をトリップの指先が撫でた。

「、トリップ?」

何事かと、蒼葉の視線が持ち上がる。

「…………あのさ。 おんなじメール送ってもちゃーんと俺ら二人にそれぞれ返してくれるのが蒼葉だし、ウイルスにもこんな風にプレゼントする、ってのは判る。 それは全然、いいんだけど……、ちょっと、蒼葉にひとつだけ頼みがあって」
「頼み?」
「うん。 俺のお願い、聞いてくれる?」

我ながらあまり真面目な口調ではなかったと思うのに、そう言うと蒼葉はやや真剣な眼差でトリップの眼を見詰め返し、ちゃんと頷いてくれた。

「…………何だよ、急にそんな改まって。 言ってみろよ」
「これ」

掌を開き、先刻蒼葉から受け取ったばかりのネクタイピンを見せる。

「……それが何?」
「あのさ……、蒼葉がウイルスにプレゼント選ぶ時は、出来たらその、これとおんなじやつにはしないで欲しいかな、って。 ……あー、判るかな……なんていうか、えーっと、ウイルスとお揃いなのがイヤとかそういうことじゃなくて、」

蒼葉が自分と同じように、ウイルスにも何かを贈るのは構わない。
蒼葉なら当然そうするだろうし、トリップもウイルスもそういう蒼葉をこそ愛しているのだ。たとえ先に誕生日を迎えたのがもしウイルスであったとしても、恐らくは同じ風に考えることだろう。
しかし。蒼葉が、ウイルスにも同じものを贈るのは、少し、嫌なのだ。
トリップのことだけを考え、トリップの存在によってのみ占められていた蒼葉の時間が、ひんやりと失われてしまうような気がしたのだ。それだけは決してなくしてしまいたくない。
トリップにとっては、それも含めた全てが蒼葉から贈られた大事なプレゼントなのである。

どう言えば蒼葉にうまく伝わるのだろうかと思案しながらトリップが言葉を連ねていると。少しぽかんとした表情でトリップの顔を見詰めていた蒼葉が、ふと突然笑い出した。

「っ、ははは、」
「……ちょっと蒼葉、ひっでーな、何笑ってんの。 俺は一応真剣に話してるつもりなんだけど」
「いや、はは、悪い悪い…… だって……、お前がヘンなこと心配してるみたいだからなんか可笑しくなって、」
「ヘンなこと?」
「そうだよ」

頬をつねろうとするトリップの指先をかわしながら、蒼葉が笑みを浮かべる。

「あのさ……、いくら俺でも、んな横着なことしないって。 お前にはお前の為の、ウイルスにはウイルスの為のプレゼントをちゃんと考えるよ。 おんなじモン贈るつもりなんか別にねーから」
 
そして、ぽんとやさしく頭を叩かれる。

「一体何を心配してんのか知らねーけど……トリップはトリップ、ウイルスはウイルスだろ。 別にそんなこと言われなくても判ってるよ、あんま馬鹿にすんなって」

トリップの眼前で、蒼葉が大層得意げに笑ってみせた。

(ああ、蒼葉は、)

じんわりと。トリップの中の何かが溶けて、全身に廻り始める。

(ちゃんと判ってる)

「…………で」

ごほん、と蒼葉がトリップとの間へわざとらしい咳払いをひとつ落とし。照れ臭そうな笑みをその奥へ仕舞い込む。

「それよりな、トリップ……いくら人が少ないったってさっきも言ったと思うけど、ここ一応往来なんだよな。 出来たらもう離して欲しいかなーって。 つうか、まあその、ぶっちゃけ離せっていうか、」

しかし、その要望も虚しく蒼葉の身体は再びトリップの方へ引き寄せられてしまった。

「って、おいっ、お前なあ! 人の話聞いてんのかよ!」

先刻よりも更に抵抗は激しくなったが、トリップの方も逃がすつもりはない。

「…………な、蒼葉。 俺って今日誕生日だからさー、もういっこだけお願いしてもいいかな。 な、蒼葉、いいよな?」
「っ、な、んだよ、おねがいって」
「俺、今すぐ蒼葉にキスしたいんだけど」
「…………………ば、」

続こうとした蒼葉の罵倒を口腔で受け止め、舌で舐め取り、それからトリップは大いに笑った。
真っ赤な顔をした蒼葉に割と本気で蹴られたが、それもプレゼントのうちのひとつなのだと思っておくことにする。全く、誕生日というものがこんなにも楽しく、こんなにも幸せなものだったとは。
こころの底から笑みが湧き上がってくるような、こんな心地は本当に久し振りだ。


本当は出来得る限り隠し通すつもりでいたのだが、あまりに幸福なのでトリップは少々作戦を変更することにした。
蒼葉から贈られたばかりのこのネクタイピンをつけて、ウイルスと合流するのだ。ウイルスは目敏い男だから、すぐに気付くはずである。そうしたらウイルスは、それはどうしたのだと訊ねるだろうか。或いは、一目で全てを察するだろうか。
どちらにせよ。あのウイルスが一体どんな顔をするのか、今からとても楽しみだ。

(マジ誕生日さいっこう!)

珍しく鼻歌さえ歌いながら、トリップはネクタイピンを指で撫でつつウイルスとの待ち合わせ場所へと急いだ。








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