melancholia//サイトの更新履歴兼、その時々のプレイゲーム日記、二次文章など。
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2010/09/30 (Thu) 鬼祓師小話 / 壇主エロ米その後

なんでこんなに長くなったの。
当初はもっと短い予定だったのに。毎度そう言っている気がするのだが大丈夫か?


先日のエロ米のオチ話というか後日談です。タイトルの通り。

前回のエロ米

此方の続きで御座います。
今回はえろはないのです。その代わりに(?)オカシラとミギーが出てきます。
そんな感じで宜しければ追記から。






鬼祓師文章 『お酒は二十歳になってから 後日談』 (そのまんまやな)










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『お酒は二十歳になってから 後日談』








うっかりと摂取したアルコールによって七代千馗が豹変してしまったのは、もう数日前の事である。

ひんやりとした常の七代とはあまりにも違う、その言動。姿態。
甘ったるく撓垂れ掛かる熱い皮膚の感触がしばらくのあいだ壇燈治の脳裏へひどくこびりつき、七代の顔を見るたび再生されてしまう自身の記憶に壇は大層悩まされていたのだが。
(空白の時間について七代から何度も状況説明を求められたのだが、口にすると互いの間に在る空気がどのようになってしまうのか想像もつかなかったので、壇は未だ、七代の追随から何とか必死に逃げ回っている)
それでも、数日も経つとさすがに、随分と記憶も薄れてきた。極力考えないようにしている所為もあったかも知れない。
しかしあの時の記憶に侵されているとはいえ、何も壇は、あの時のひどく甘い七代千馗の方が良かったと、思っているわけではなかった。
たとえ思考回路が読み辛くとも、素直でなかったとしても、壇の全てを掬い上げたのはそんな七代千馗なのである。その七代をこそ、壇は好きだと思うのだ。そうした七代千馗こそが壇の、親友なのである。そう思うのは確かに真実だった。
けれど。
常がそうであるからこそ、その分、あれほどまでに扇情的に見えたのである。あの七代のぬるりとした甘さに欲を煽られて、我を忘れ、思うままに壇がその身体を貪ってしまったのも、また事実なのだった。

「………………はァ」

己の自室にて、壇は重く溜息を吐いた。
大分記憶の濃度を薄められたつもりでも、こうして自室の寝台へ腰掛けているとやはり思い出してしまう。全くあの男は何故酒など飲んだのか。壇は、己の胸中にて涼しい顔をしている親友に対し少し的外れな悪態をついた。

ともかくも。
七代千馗という男が酔うとどうなるのかという事について身をもって知った壇としては、このさき断固として酒を飲ませるわけにはいかなかった。
もう決して飲まぬと一応約束はさせたが、どうにも不安である。壇とて始終ずっと七代に張り付いているわけではない、眼の届かぬ処でいつどんな事が突然起こり得るのか判らないのだ。
もしあれが。己以外の人間の前で発動されてしまったら。それを考えると壇は、心底恐ろしい。
もしどうしても飲みたいのであれば壇の前で、と。七代はその約束を確かに承諾しはしたが、果たしてあの男はそれをきちんと固く守るつもりがあるのか無いのか。壇は未だ七代本人へ事実を打ち明けられてはいないのだ、だから、七代は自分がどう豹変したのかという事実を知らないままなのである。それゆえに七代は、当人であるにも関わらず事の重大さをいまいち自覚出来ていないのではないだろうか、壇が危惧する程は。

「…………やっぱ、話しとくべきだよなァ……、あいつの事なんだし」

知っているのと知らずにいるのは、全然違う。
知っていれば七代とて自身でちゃんと留意するだろう、そうなれば壇がこうして気を揉む必要も無くなるのだ。それは重々、判っているのだけれど。

「け、ど、なァ…………、説明するったって、あれをどうやって本人に言えば……」

壇はひとり、頭を抱えた。
説明を渋る壇の胸中に在るものは、主に、羞恥というものである。
恥らっている場合では全く無いのだと何度己を奮い立たせてみても、どうしても現在のところ、羞恥の方が理性と常識を上回ってしまっている。
あの時の七代が一体どういう状態だったのかを言葉に言い表わしにくい、というのも勿論ある。しかし、どちらかといえばそれよりも、あの時の事を詳細に説明してしまえば必然、その姿態に自分がひどく煽られてしまったのだという事実(実に約五回にも渡って行為へ耽ってしまった程に)までもが当人に知れてしまうので。
壇がいつまでも渋っている理由の最たるものは、実は、それである。

「メール…………っつっても、次に顔合わせた時がすげえ気まずいしなあ」

誰も居ない自室にてぶつぶつと呟きながら煩悶していたその時である。寝台の傍らに置いていた携帯電話がぶるぶると震え出したのは。

「、うっ、お、」

振動のリズムはメールでなく電話が掛かっている事を示していたので、慌てて取り上げる。
壇へ電話を掛けてくるような人物はごくごく限られていて、その中でも一番頻度が高いのはやはり七代千馗である。だから壇は確率的に、これも七代からなのだろうと思った。
他ならぬ七代千馗の事について悩んでいたところだっただけに、脈が少し速まってしまう。
一体何の用なのだろう。全て済んだというのにまた例の洞の探索なのだろうか。勿論、そうした用向きなのであれば壇はふたつ返事で承諾する心積もりである。同行して欲しいという七代の頼みを壇が断った事は、今までに一度も無かった。

「……………………、」

しかし。いざ開いたディスプレイには違った名が表示されていた。
それは壇にとって、全く、思ってもみなかった名前である。

「…………もしもし」

決して仲が良いとは言えぬ。
むしろ悪い方だろう。当然である、元々敵方だったのだから。敵と呼べる存在だったのは以前の事だったし今は一応仲間、なのだから、信頼していないというわけではないのだが。

『今から出てこれるか』

携帯電話に濾過されたその男の声は相変わらず温度も無く、挨拶ひとつ無しにいきなり用件を切り出してきた。らしいといえばらしいのかも知れないが、それにしても本当に愛想の無い。
とて、壇もまわりくどいのは好きではない。軽く嘆息して問い返した。

「おいおい……、鬼印盗賊団参謀が俺に一体何の用なんだよ?」

壇がそう訊ねると、鹿島御霧は一拍の間、何か思索したようだった。
この男が壇にあてて電話を掛けてきた事など、今までに無い。その事を考えると、何か余程火急の用なのだろうか。
何となくじんわりと悪い予感が胸郭の中に煙る。

『……お前、』

御霧の声音に言い淀むような色を感じたのは壇の気の所為か。

『七代が…………、酔ったところを見た事があるか?』
「!!」

瞬間、全身の血が一気に凍えてしまった。
今、鹿島御霧は何と言ったのか。
携帯電話を持つ壇の指が、ふるりと震える。途端、蘇ろうとする記憶を必死に脳裏から追い払った。
何故、この男がそんな事を言うのか。

『あるんだな? なら話は早い、暇なら七代を引き取りに来てもらいたいんだが』

けれど、御霧の声音は壇の動揺など素知らぬていで。憎らしいほど冷静に整ったまま淡々としていた。

「おいッ……あ、あいつに飲ませたのか!?」
『耳許でがなるな、そんなに大きな声を出さなくても聞こえてる。……飲ませたのは俺じゃない、あの馬鹿だ。経緯は知らんが七代が来ていて、義王と一緒に飲んだ、らしい』

鬼丸義王。鬼丸義王が。
壇の記憶に在るあの七代千馗と、義王の姿が重なる。

『で、知ってるなら判るだろうが手に負えなくなっ』
「…………寇聖だな、今すぐ行くッ!」

御霧の言葉を最後まで聞かず、そう言うなり電話を切り。そのままの格好で壇は家を飛び出した。
時刻は午後九時を過ぎたあたり。居間でテレビを見ていたらしい母と妹があまりの勢いにぎょっとしていたが、全くそれどころではない。

「く、そっ、七代…………!」

何故、寇聖などにひとりで行ったのか。何故、約束したというのに酒など飲んだのか。
もし、無理に飲まされたのだとしたら、壇は鬼丸義王を絶対に許さない。
嗚呼、願わくば。七代のあれが誰彼構わず発動するようなものでないように、と。
壇はそれだけを祈りながら、死に物狂いで夜道を疾走した。






寇聖高校の校門前。
待機していた鹿島御霧があまりの到着の速さに驚いていたのだが、壇はその御霧を引き摺るようにして寮の部屋まで案内させた。
七代千馗が居るのは鬼丸義王の自室だという。

「なっ……、ん、で、隔離しねェんだよ!」

それを聞き、全力疾走の所為でひどく息を切らしながら壇は思わず怒鳴った。
あの状態の七代を、義王と共に居させておくとは。
寇聖高校男子寮の廊下で行き交う盗賊団員たちが、盗賊団参謀と壇燈治という奇妙な取り合わせを一体何事なのかと注視していたのだが、壇の視界には全く映っていない。

「、隔離? なんだ、お前はあれが他の人間にも伝染するとでも言うつもりか?」

噛みつくような壇の剣幕に眼を眇め、御霧は肩を竦めた。

「で、伝染されてたまるか! そうじゃねェよ、鹿島、お前も見たんだろ? あんな状態の七代を誰かと一緒にしちまったら、」
「というかお前、明らかに家着で……せめて制服くらいは、いや、まあいい俺には関係無い。それより着いたぞ、此処が義王の部屋だ。恐らく七代も其処に居るだろう」

寮の中でもひときわ重厚そうな扉を指差され。ようやく勢いを止めた壇は、しかし一瞬、躊躇した。
もし。
もしも、扉を開いた時、想像した通りの光景を其処に見てしまったら。その時は一体どうしたらいいのだろう。その時果たして己がどうなってしまうのか。壇自身、全く見当もつかなかった。
けれど。
壇は自らを奮い起こし、拳を握り直す。
扉の前でいつまでも躊躇している場合では無い、一刻も早く此処から七代千馗を連れ帰る事こそが壇の役目なのである。
やや怪訝な表情で御霧が見ているなか、ごくりと唾を飲み、壇は思い切ってその扉を開け放った。

「しっ…、七代!!」

突き破るような勢いで開かれた扉の向こうに在ったものは。

「……………………、」

壇の想像していたものとは全く異なる親友の姿。
恐れていた予想が外れた事は、確かに、壇にとって幸福以外の何物でも無かったのだが。
しかし、これは。

「……ん、だァ? なんでテメエがこんなトコに居んだよ」

床の上で胡坐をかいている部屋のあるじ、鬼丸義王がぎろりと下から壇を見据える。しかし、壇の視線はその隣の七代へ釘付けになっていて、義王の視線に気付くような余裕は一切無かった。

「はッ……御霧、さてはテメエの仕業かァ?」

獰猛な獣じみた眼光にも御霧は塵ほども臆さず、ただ眼鏡の蔓に触れながらひとつ嘆息を落とした。

「……全くよォ、ウチの参謀サマはシャベェ真似をしてくれるぜ」
「俺は余計な真似だとは思わないがな。じゃあ訊くが、義王、お前はこれの収拾をきちんと自らの手でつけられるとでも言うのか?」

これ、と。御霧が示したのは、他でもない。七代千馗である。

「…………」

義王の眼に僅かな困惑の色が混じり。そら見ろと言わんばかりの顔で御霧がもうひとつ溜息を吐く。
壇と、義王と御霧、三人の視線の先に居る七代千馗は。
ぺたりと床に座り込んだまま、眼前の騒動には眼もくれず、ただただ静かに涙をこぼし続けていた。

「……………………し、七代、」

脱力したように、壇がよろりと膝を折って七代の様子を確かめる。
七代は、壇が名を呼んでも其方を見なかった。
ぽろぽろと涙の粒が眼から溢れ、薄赤い頬を伝い、顎から落ちて床で弾ける。涙を含んで濡れた睫毛が、瞬きにつれて震えるように揺れていた。

「お…………、い、七代、大丈夫…………、か?」

後から後から流れ落ちる涙を見詰めていると、何故かとても心がざわめいてしまう。
先刻までの勢いがすっかり削がれた壇は、七代の頬にそっと触れた。
やや紅潮してはいるのだがこうして指で触れてみると、濡れている所為なのか存外冷えている。その皮膚の冷たさがいやに、憐憫の情を沸き起こさせた。
この男が泣いているのは何も、痛みの所為でも辛さの所為でも無い。壇とてその事は承知している。常の七代千馗では無いからこれも恐らくはアルコールの所為なのだろう、けれど、先日のそれとは全く違った姿に壇は首を傾げるしか無かった。
本当にこれも酩酊、なのだろうか。

「な、泣くなよ、七代」

自らの袖口で壇は七代の頬を拭ったが、涙は一向に止まる気配が無く、拭き続けていても全くきりが無い。

「お前に泣かれると、どうしていいか判んなくなるだろ」

何だか弱ってしまって壇はそう言ったのだが、七代はただただ涙をこぼし続けるだけでやはり何も反応しなかった。眼前に居る壇の存在にも気付いていないのかも知れない。
一体、どうしたらいいのだろう。
先日とて、壇はただあの姿態に煽られ流されただけで何も策を講じる事は出来なかったのだ。数時間経てば元に戻るという事は、判っているのだが。今回も、ただそれを待つしか手は無いのだろうか。

「無駄だぜ、大将の耳には何にも届かねーらしいからな。いくら呼んでも応えやがらねー……、っていうかよォ、オレ様はテメエを招待したつもりはねーんだがなァ、鈍牛よォ」

壇の思索に、声音が割り込んでくる。挑発するように壇の方へ伸びた義王の手許で、鉄色の鎖が冷たい音をたてた。

「お呼びじゃねーんだよ、テメエは失せなッ」
「義王、」
「御霧は黙ってろ!」

対して壇は。苛立ちと憤怒を噛み砕くようにして歯を軋ませる。

「てめえ…………んなこと言える立場か、このクソ猿がッ。七代に酒なんざ飲ませやがって」

大体、呼ばれたのか何なのかは知らないが、七代は何故鬼丸義王の部屋になど来たのか。壇はそれが不思議で仕方が無い。あの男はひんやりとしているように見えて、何でも簡単に懐へ抱き込み過ぎである。
元凶である義王は、甚だ鬱陶しそうな顔で壇を一瞥し、犬でも払うような素振りで掌を振ってみせた。

「部外者のテメエに言われなきゃなんねー事はひとッつもねーんだよッ。これはオレ様とコイツの問題だろーが、関係ねーヤツはとっとと帰りやがれ!」
「七代泣かしといて何抜かしてやがんだ、てめえこそすっこんでろ!」
「あァ!? ココはオレ様の部屋なんだよッ、やんのかコラ!」
「おお、望むところだッ! こっちこそ何発殴っても殴り足りねェぜ!」

感情の沸騰するままに立ち上がり、喧々囂々と火花を散らす。
その壇と義王の音量に、御霧はひどい頭痛を堪えるような表情でこめかみを押さえ。重く重く溜息を吐き落とした。

「喚くなッ、この馬鹿どもが! どうしても殴り合いたいと言うなら体育館の鍵を持ってきてやるから其処でやれ、幾らでもやり合わせてやる! だが此処では騒ぐな、一体全く何時だと思ってるんだ?!」

御霧の言は全くもって正論だったのだが、如何せん残念ながら相手はふたりとも聞く耳を持っていなかった。

「っせーな、口挟むなッつっただろーが!」

苛立った義王が足許にあったプラスチック製の屑籠を勢い良く踏み潰したが、その大きな破壊音に晒されても依然として七代は涙を流し続けていて、少し顔を俯けたまま微動だにしない。

「いいかげんにしろ義王! 大体お前が酒なんか飲ませるからこういう面倒臭い事になったんだろうが!」

癇癪を起こして暴れ廻る子供を叱りつけるように御霧はそう制し、ぎろりと視線をそのまま今度は壇の方へ向けた。

「大体、壇! お前もお前だ!」
「、は、あ?」

義王はともかくとして、鹿島御霧にまで怒鳴られるとは思わなかったので、壇は少し面喰ってしまう。
その壇の鼻先に御霧は指先を突き付けた。

「お前……前にも酔った七代を見た事があるんだろう? 何故対処方法を知らないんだ? 酔うと七代がどうなるのか知ってるような素振りだったから、てっきり俺は元に戻せるもんだと思ってたんだがな……何故お前まで義王と一緒になって取り乱してるんだ?」

オレ様は取り乱してなんざいねえ、と、義王が脇でそう抗議しているのだが、御霧は全く聞こえぬ振りを通している。いちいち義王に応対していると時間が幾らあっても足りない、それを重々熟知しているものならではの遣り方なのである。

「……………………な、ぜって、言われても」

指を突き付けられた壇は、ぐるりと視線を泳がせながら半歩後退した。

「い、一回見た事あるからって、んな対処法まで判るわけ無ェだろ、そんなモンがあるなら俺の方が知りてェくらいだっての」

対処方法など。そんなものが判っているのなら、壇とて。

「て、いうか、も、もういいだろ? 俺はこいつを連れて帰、」
「いや待て。前の時はどうだったんだ? どうやったら戻った? 酒が抜けるのを待っただけなのか?」
「、ま……、前の、時、……は、」

前、と、突然言われて壇の足がもう半歩下がる。
その時ちらりと。
未だ一言も喋らず、静かに涙をこぼし続けている七代の顔を見てしまったのがいけなかった。開かぬようにと固く固く閉じていた蓋がぱちんと吹き飛んでしまい、其処から記憶が一気に溢れ出る。
あの時の七代の、頼りない声音。常よりもひどく熱かった粘膜。蕩けた眼差。

「ッ……………………」

急速に顔が熱くなる。じっと此方を見据える御霧の視線に耐え切れず、壇は眼を逸らしてしまった。
見られているからといって何も、脳裏に浮かぶ映像までもが見透かされるわけでは無いのだが。現在己の脳に再生されている画があまりにもあんまりな所為で、どうにもひどく居た堪れない。

「…………なんだ、その反応は。何故そこで赤くなる必要があるんだ?」
「気色悪ィやつだな、オイ」
「だ、…………」

義王にまで甚だ怪訝そうに言われ、反論しようとしたのだが言葉がうまく出てこない。更に頬に熱が集まってしまうのを自覚しながら、壇はおろおろとあと一歩後ろへ下がった。
大層不審気な壇の様子を御霧が怜悧な眼で無遠慮に観察し、そして何かを考えている。それを見、壇は少し身震いをした。
情報屋や参謀という彼の背負う肩書は、いずれも頭脳明晰である事が求められるものである。鹿島御霧という男は頭が切れる。それは壇も重々承知の上である、だから、御霧とは出来得る限り眼を合わせたくなかった。何といっても壇は其方の方面には全く、自信が無いのだから。相手が鹿島御霧なら尚の事、拳勝負であるならともかくこういった腹の探り合いにおいては太刀打ち出来る筈が無い。ぼろを出さずに遣り過ごせるのか如何か。
頼むから前回の事を掘り起こしてくれるな。
壇はひどく切実にそう願ったのだが。
どうやらそれは叶わなかったらしく、御霧は疑わしそうに眼を細めながら口を開いた。

「………………………………前回は、こうじゃなかったのか? おい、どうなんだ? 今後の為にも知っておく必要がある。言え、壇」

なんでそんな事まで判るんだ、こいつは

紅潮した頬を途端に青くしながら、壇は己の首が締まっていくような錯覚に陥った。
ぎゅっと見えぬ掌に絞められて息が苦しくなる。

「おい、何故黙ってる」

にじり寄る鹿島御霧と、壇の顔へ突き刺さる二人分の視線。
何故と問われても、壇には応えられるわけが無いのだ。
前回はひどく扇情的に豹変し、快楽の渦へ深く深く引き込まれてしまったのだ、などと。酔った七代千馗の身体を思う存分貪ってしまったのだ、などと。
当人である七代にも未だ伝えられていないものを、どうして説明出来ようか。

絶対絶命

冬だというのに、青くなった壇のこめかみに一筋の汗が流れ落ちる。
そうして壇は、脳裏でもう幾度となく叫んだ言葉を、もう一度繰り返した。

七代、なんでお前は酒なんか飲んだんだよ

これは。あの日、快楽に敗北し流されてしまった事への罰なのだろうか。






結局。

口にした量が少なかった所為なのか、絶妙のタイミングで七代千馗がめでたく自我を取り戻したので、首の皮一枚のところで壇は窮地を脱したのだったが。
それは、その場凌ぎの事である。
鬼丸義王はともかくとして鹿島御霧の腹に燻ぶった疑念までもが、きれいに晴れてくれたわけでは無いのだ。あの夜に起きた真実について追及する手が七代当人を含めて結果、増えてしまった計算になり、壇の息苦しさは依然として続く事になる。
壇自身が観念して、口を割らぬ限りは。


そしてまた後日、どうしても確かめてみたくなった壇はあの日のように再び家へ七代を呼び、おそるおそる少量の酒を飲ませて実験を試みた。
酒を口にした七代千馗はとろりと淫猥な熱を帯びるでもなく、とて、涙を流すでもなく。ころりとその場で丸くなり、そのまま二時間ほど、その間一度も眼を醒ます事なく深い眠りについてしまった。
その次の機会では何故か延々と普段の生活態度について説教をされ、そのまた次には一体何が面白いのか指を差しながら笑い転げられ。
違った姿態を眼にするたび、壇は常との差異にひどく驚かされた。それらはいずれもまさしく、奇態としか表現出来ぬものだった。
一体、この男の構造はどうなっているのだろう。思考回路も読めないが、根本的な構造においても全く理解不能な男である。

ともかくもその後、あの時のような甘ったるい七代の姿を眼にする事は無く。
そうなると今度はそれはそれでやや残念な気がしないでもなかったのだが、壇はぶるぶると首を振って、今や幻のような記憶とそうした自分の気持ちを脳裏の隅へ押し遣り、そうして強固な鍵をかけた。
あんなに大変な思いをしたのである、残念である筈が無い。
決して。
残念などでは。



当人、七代千馗は、未だ何も知らないままである。
















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つまり、七代千馗のアレはロシアンルーレット形式だったという事で。
なので勿論またアレなアレに当たる確率もあります。よ。一応。

七代が寇聖の寮へ遊びに行くのは別段珍しい事ではなく、壇が知らなかっただけなのです。

壇には色々すまんかった。



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