melancholia//サイトの更新履歴兼、その時々のプレイゲーム日記、二次文章など。
--/--/-- (--) スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

スポンサー広告 |


2010/08/08 (Sun) 鬼祓師小話 / 鬼丸義王と七代千馗で、あーん

二日くらいで書ける文章もある……うーん、なんですかね。
いつもネタを盛り込み過ぎてるから伸びるし遅くなるんだ、って最近感づいているんですけどね!

七代千馗がオカシラに餌付けする話です。

何とも薄ら寒い。薄ら寒いですよ。
鬼印ボタンを押して下さった天使が喜んで下さるといいんですが。
ほんのちょっとだけ春夏の鬼印小話と連動しているのかも知れません。

関係無いんですがわたしは牛丼を食べた事が実はなくて……結果的に大して描写はしなかったん
ですが、某牛丼屋さんのサイトに行って色々調べたりとかしてました。うう。


さて、書き掛け文章を引き続き頑張ります。






鬼祓師文章 『本音五割』






----------------------------------------



『本音五割』






「よお、義王ォォォ」

音量こそ大きいが何処か棒読みな叫びと共に、部屋の扉が蹴り開けられた。



寇聖高校男子寮の、ひときわ広く取られた一室。
寇聖の生徒であれば知らぬものはひとりも居ない。前理事長の子であり、鬼印盗賊団頭領である鬼丸義王の居室である。
他人の部屋の扉なら蹴り破った事はあるが、その逆はなかったので、部屋でひとり昼食が到着するのを待っていた義王は激しい破壊音に対し存外驚いた。この寇聖の中に、まさかそんな振る舞いが出来るような骨のある人間が居たとは。
しかし、義王の認識はやはり正しかったのである。

「…………大将ォ」

鬼丸義王の部屋の扉を蹴破るなど、寇聖の生徒には出来よう筈もなかったのだ。そのような人間が寇聖に存在しないからこそ、義王は。
蝶番から根こそぎ扉を壊した直後とは思えぬ笑みを浮かべ、其処に立っていたのは七代千馗である。

「ごめん義王、両手が塞がってたからドア蹴破っちゃった」
「はッはァ!どうせ、声掛けんのが面倒だったとか言いやがんだろうが……全くイイ度胸だぜ!」
「うーん、でかい木の板とスパナとかあればもしかしたら調合出来るかも……、いや、違うな、似たような情報のものっていえば……」

修理をする、というのが普通だろうに。それよりも先に作り直す事を考えているらしい七代の封札師的思考回路に苦笑し、義王は黒い革張りのソファへ腰を下ろした。
とても大きくて座り心地の良い自慢のソファである。

「ドアの一枚や二枚どうってこたァねェよ、こっちの区画にゃオレ様の部屋しかねーからな……ほとんど誰も寄りつかねえ。ま、テメエみたいな馬鹿以外はな。ドアなんざ無くたって大して変わりゃしねーよ」

訪ねてくるものといえば、かの参謀、鹿島御霧くらいだが、御霧とて扉を蹴破るような真似をする筈がなく。此処に来て、かつこんな振る舞いをするのは七代千馗ただひとりである。
そう考えると、義王の口許に笑みめいたものが滲んだ。義王にとってそれは大層愉快な事だ。

「ふうん。さすが頭目、器がでかいねえ」
「たりめーだ」

義王はふんぞり返っている。
蹴破った手前大っぴらには馬鹿に出来ず、七代はやれやれと控えめに肩を竦めた。

「…………で、一体寇聖くんだりまで何しに来た? テメエに売られる喧嘩なら全部買い占めてやるぜ? 金に糸目はつけねーぞ」
「いや、そういうアレじゃ全然ないんだけど……これ」

言いながら七代は、扉を破壊する原因となった荷物をテーブルの上へ下ろす。白いビニール袋がふたつ。義王はそのうちのひとつに、とても見覚えがあった。

「……………………オイ、大将」

まさか、と思う。義王の胸中など素知らぬ顔で七代はにこりと笑った。

「たまにはさ、昼でも一緒に食おうと思ってな。お前これ、常食してるんだろ?」

確かによく食べてはいるが、常食していると言われると何となく反発を覚えるような。しかし義王が言いたいのはそういう事ではない。

「……オレ様は御霧に買いに行かせた筈だったんだがなァ? なんでテメエが牛丼持ってんだよ」
「だから、昼飯を、」
「そうじゃねえ、オレ様はなんでテメエがパシッてんだッつってんだよ!」

義王の音量も何処吹く風で。
七代はさっさと袋から牛丼を取り出し、テーブルに広げている。もうひとつの袋はどうやらカレーらしかった。もしやこれはあの店のカレーなのだろうか。独特の匂いが義王の部屋に広がっていく。

「あのなあ義王」

僅かに呆れたような表情で七代は、割り箸で牛丼を掬い。それを義王の口許に押し付けた。

「う、」

口を開けたのは主に驚きによるものだったのだが、七代はそれを決して見逃さずに素早く牛丼を放り込んだ。口に入ってしまったものは仕方が無いので義王は渋々それを咀嚼したが、味はほとんど感じられなかった。

「お前はちょっとミギーを酷使し過ぎだって……ミギーの胃が破裂したらどうすんの? だから今日交代したの」

義王の隣に座っているこの男はそう言いながらひどく平静に、第二便を運ぼうとしている。

「、オイ……」
「何だよ、牛丼好きなんだろ? ちなみにこれ、俺の奢りだから。有り難く食えよ」

義王の視界の中で七代千馗は微笑んだ。この男の言う、一緒に昼食を、というのはまさかこういう意味なのだろうか。ふざけんな、と七代の手を掴んで制止しようとしたのだが、途端、すごい眼で睨まれた。

「おとなしく口、開けろって」

恐れたわけでは決してなかったのだが。七代千馗の発する意味不明の気迫にうっかりと圧されたのである。

「そうそう、それでいいんだって」

義王がそれを食べると、七代の顔に笑みが戻った。いやに嬉しそうだ。
この男は鹿島御霧の代わりに牛丼を買いに走り、わざわざ部屋にまで持って来て、そして義王に食べさせる事が、そんなに嬉しいのだろうか。相変わらず、喜怒哀楽のポイントが全く把握出来ない男である。
何だか楽しそうに微笑んでいる七代千馗の顔を眺めていると、義王はあれやこれやと思考を巡らせるのが突然面倒になった。
この光景がいかに可笑しなものであるかという事に対し自覚は充分あるのだが、先刻他ならぬ自らが口にした通り、此処にはほぼ誰も来ないのである。それに、この男の変なこだわりに逆らおうとする方が面倒だ。喧嘩ならまだいいが意味不明な理由を挟む諍いは義王の望むところでは全くないので。
薄ら寒いという事実にさえ眼を向けなければいい。食べさせてやると七代は言っているのだ、箸を使わずに済んで良かった、というくらいに気楽に構えておけばいいのだ。恐らくは。
元来鬼丸義王は他人の視線で正否を決めるような人間ではない。己が是と決めたなら、それは絶対に是なのである。
或る意味で腹を括り、或る意味で開き直った義王が、差し出されるままに牛丼を受け入れると、七代は更に機嫌を良くしたようだった。

「テメエ…………楽しいのかよ?」

義王に牛丼を食べさせている所為で自分のカレーは冷めていく一方だというのに。少し呆れて訊ねると、七代は眼を細めた。

「ん? ああ、俺、ひとに食べさせるの結構好きなんだよな」
「はッ…………、相変わらずおかしな野郎だぜ、テメエは」

こうやっておとなしくしてるとライオンの子供みたいでかわいいんだけどなあ

至近距離である。溜息混じりに呟かれたそれが聞こえなかったわけでは勿論無かったが、義王は知らぬ振りを決め込んだ。
義王にとっては全くの意味不明な言葉だったからだ。この男の口にする言語は確かに日本語の筈なのだが、時々本当に意味が判らない。
米粒をきれいに集めて残さず掬い、丁度咀嚼し終えたところで次を差し出す。恐ろしく的確である。慣れてしまえばこれはとても快適な食事方法なのかも知れない。そう思ってしまうのはもしかしたらこの男の思う壺なのだろうか。
口を動かすくらいで他にやる事がないので義王がぼんやりと七代の造作を眺めていると、七代はふと何かを思い出したように短く笑った。

「けど……せっかく俺が代わってやるって言ったのに、ミギーはあんまり嬉しそうじゃなかったなあ。なんか微妙な顔してた。なんでかな、頼まれてたの自分だから、お前が怒ると思ったんかな」

七代の言葉は半ば独り言のようでもあった。
米と肉をひたすら噛み潰しながら義王は眉を顰めたのだが、七代はその事には気付いていないようだ。

「……ま、さっきも言ったけど、俺は進んでこれを請け負ったわけだから。判ってるよな? 理不尽に怒ってミギーの眼鏡ブチ折ったりすんなよ? 眼鏡は高いし、店に行ったってすぐには出来上ってこないんだからな」

最後のひとくちが義王の口許へ運ばれ。それを食べるついでに義王は、割り箸を噛んでやった。
戻そうとした箸が動かなかったので、七代が少し驚いて黒い眼を瞠る。
戦いのさなかには酷く鋭利な閃きを帯びるこの眼も、こうしている時にはとても静かだ。獣のような義王と同種のあの光は今深いところで眠っているのだろう、消失したわけではなく。あの色がそうそう失われる筈がない。

「、箸を噛むな、お行儀がわるい」

ふざけた事を真顔で言って七代が箸を引こうとするが、義王は噛んだままのそれを強引に奪い取った。呆気に取られているらしい七代千馗の様子が、義王にはどうにも憎らしい。
全く、この男は何も判っていない。理解出来ていない。聞くところによれば七代は、勉強が趣味という何とも気味の悪い男なのだそうだが、義王から見れば単なる馬鹿である。大層な眼を持っているくせに見えていないものがあまりに多過ぎる。
七代の手から奪った箸を無造作に吐き出し、テーブルの方へ放る。静かな部屋にぱらりと軽い音が跳ねた。

「…………テメエ見てるとよォ、一年先に生まれても、あんま脳には関係ねーなッてよく思うぜ」

放られた箸を見、そうして義王の方へ眼を戻した七代の表情がひび割れる。

「何? 俺の事ばかって言いたいの?」
「よく判ってんじゃねーか大将」

言うと、七代が尖った視線を突き刺してきたが、義王はそれを鼻で笑ってやった。何も判っていないものを馬鹿と言って一体何が悪いのか。

「ひとつ訊くが、」

空になった鉢を未だ手にしたままの七代の眼を、義王はひとつ距離を詰めて覗き込んだ。

「オレ様と昼メシ食いに来たッつったよな? そりゃ誰の為だ? 御霧の為なのか? アイツの苦労を減らしてやりてえッて、おやさしい親切心だけでテメエは此処に来たのかよ?」

義王が言うと一瞬、黒い色の眼が吊り上がった。
ひんやりとした顔をして生温い事ばかりするくせに、この男はやさしいと言われる事がとてもきらいなのである。義王はそれを知っていてわざと言葉に混ぜたのだ。
口先でばかり冷たい振りをするこの男が何を考えてそうしているのか、それは訊ねた事が無いから判らない。けれどこれも愚かな事だ。馬鹿である。他ならぬ己のこころに従った己の行動を何故偽るのか。義王にはそのあたりが全く理解出来ない。
二拍程の間、七代は義王を睨んでいたが、義王の吐いた言葉の意味が判ったのだろう。沸いた棘を嘆息にして落とし、鉢と箸を片付けた。

「………………………………別に、単なる判官贔屓だよ。お前の眼鏡に対する扱いがあまりに悪いから」
「で?」

言い訳は聞いていない。義王が求めているのは簡潔な回答である。重ねて問われ、七代はもうひとつ溜息を吐いた。

「………………ま、……そうだな、半分、正解かな」
「はんぶん?」

得たら得たで、大層判り難い答えだ。
それをそのまま表情に表わすと、七代は義王の顔を見て少し笑った。
そうしてようやく自分の昼食を開始するようなので、義王が先回りをしてプラスチック製のスプーンを取り上げた。

「、ちょっと、返せよ、」
「結局全部食わしてもらったからな、今度はオレ様の番だろーが」

義王がそう言うと、七代はとんでもないという顔をして素早くスプーンを取り返した。

「何なんだよ大将」
「お前が何なんだよ、そんなとこばっかり義理堅くなくてもいいよ、俺は食べさせられるのはきらいなの」
「…………んだ、そりゃ」
「食べさせるのは楽しいけどな、逆は好きじゃないんだよ」
「…………はッ、相変わらず判り難い男だぜ……」

無理に奪ってカレーを口に押し込んでやろうかと義王はちらりとだけ考えたのだが、冷えたカレーを黙々と食べている七代千馗の顔を眺めているうちに衝動は流れ、すぐにどうでもよくなった。
そういえば、と思ったのである。
鹿島御霧やアンジーとも、あまり食事を共にする事はないのだ。時折は同席する事もあるがそう頻繁ではない。義王が誰かとこうして共に何かを食べる、というのは随分と久し振りだった。そして勿論、七代千馗と共に食事を摂るのも初めての事である。
ひとりで摂る食事に感傷めいたものを抱いた事は今までに一度もない。けれど。自分の隣で食事をするこの男のさまを眺めていると、何となく、こうして傍に誰かが居るというのも悪くはないのかも知れないと思った。誰か、というのが恐らくは七代千馗に限られているのであろう事は、義王自身充分自覚しているのだが。
そしてぼんやりと考えた。
鹿島御霧の苦労を肩代わりする為、というのが此処に来た理由の半分だと言うなら、後の半分は何なのだろう。

「…………何?」

じっと顔を凝視していた所為で、七代が訝しげに此方を見遣る。
残りの半分を教えろと、そう言おうとしたのに、気がつけば義王は全く違った言葉を吐いていた。

「いつ寇聖に来んだよ」

義王がそう言うなり、七代はがっくりと項垂れてしまった。

「…………またその話ですか」

この男がいくら項垂れようと、義王の意思は変わらないのである。
義王にとっては己の欲求が全てだったし、脳は欲するものを認識する為に、そして身体はそれを手に入れる為に在るのだ。望むものが眼前に在ってそれが未だ得られていないのだから、義王は何度でも言う。
この男自身を、というよりまずは、鴉乃杜から抜けさせるのが当面の目標である。
カレーであっても食べ方は変わらないらしく、妙にきれいに皿を浚いながら七代は苦い顔をした。

「喧嘩狂、って……大変だよな。うちにも似た感じのやつがひとり居るけど、まあ、あれはああ見えて普段は結構おとなしいし、お前とは違うのかな」

壇燈治の事を言っているのだろうが、義王から見ればあの男は全く己とは異なる存在である。
壇燈治の振るう拳には理由が在った。或る色が纏わりついていた。義王にはそういうものはない。原因は、在るけれど。
それを考えるならば義王と同じなのはやはり七代千馗なのだが、七代自身はその事を自覚していて尚、言えば笑って否定するのだろう。自分は義王のようにちからを交える行為に対し、興奮もしなければ愉悦も感じていないのだと。認めているくせに口先で否と言う、その往生際の悪さが義王には歯痒くて仕方が無い。
やはりこの男は馬鹿だ。しかしこの大層愚かな男を、何より義王は欲しているのである。
馬鹿なのは、自分も同じか。
苦みにほんの少しだけ呆れと笑みを混ぜ、七代は義王の眼を見詰めた。

「まあ、いつでも遊べる玩具が欲しいってのは判るけどさ…………、お前もよっく知ってると思うけど、その玩具、あんま元気有り余ってねえし、お前が期待してるほど面白くはねえよ?多分」

その玩具はきっと、そんなには楽しくねえよ?

そう言って、七代は薄く笑っている。

「オモチャ?」

確かに。七代千馗は唯一、義王と同じ舞台へ立つ事の出来る男である。だから捕らわれた。だから惚れた。この男と戦う事、それ以上に義王の血を沸騰させるものは他にはないだろう。
けれど。
義王が七代千馗を求めるのは、その事ばかりではなかった。義王を捕えるものは何も、七代の持つちからだけではないのだ。
その事を、どうやらこの男は知らないらしかった。
こうして傍に居て、眼の色を見詰めても判らないとは。七代千馗という男はやはりどうしようもない馬鹿だ。勉強が趣味などと、全く聞いて呆れる。こんなに愚かな男にでもこなせるというなら、勉強など、本当に大したものではない。

「はッ…………、全くよ、テメエはマジで大馬鹿野郎だぜ」
「、また馬鹿って言った?」
「馬鹿に馬鹿ッつって何が悪いんだよ」
「馬鹿に馬鹿って言われる筋合いは無えんだよ」
「馬鹿だって自覚が無えのは格好悪ィぜ? 大将ォ」

先刻のように七代が眼を吊り上げている。間抜けな顔だ。
その額を指で思い切り弾き、義王は笑って立ち上がった。

「いっ、た!」
「ま、大将風に言うんなら、半分正解、ってトコだな」

弾かれた額を必死に擦っている七代は大層無様である。そうして怪訝な眼で、立ち上がった義王の顔を仰ぎ見た。

「…………はあ?」
「お互いにメシは食い終えたんだからよ、腹ごなしに付き合ってくれんだろ?大将。そんでテメエがオレ様に勝ったら後の半分、教えてやらァ」

マントのように上着を翻して口角を上げる。重い制服の布がふわりと空気を孕むとあちらこちらで小さな金属の音がした。そのさまを胡乱に見遣り、七代は肩を竦めている。

「いいよ、そんな、そこまで興味無いって」

滑らかな頬にはまたも、面倒臭い、と大きく書いてある。
出会った当初はこの男特有の物言いに萎えさせられる事も幾度かあったのだが、最近では何もかも面倒だとぐずる七代千馗からいかにしてやる気を引き出すか、という事について策を講じるのが少し楽しくなってきたのだ。
容易く手に入ってしまっては面白くない。難しいものを己のちからで捩じ伏せてこそ。

「その代わり」

ソファに立て掛けてあった愛用の旋棍を爪先で蹴り上げ、掌で受け止める。じんわりと染み入るように馴染む得物の感触。

「オレ様が勝ったら、テメエのあと半分ッてヤツを教えろ。いいな」

両掌に得物を握り、義王がそう言うと。七代は、面倒だと書かれた顔に困惑を乗せて苦笑した。

「…………やめてよな、そういう事を言われると手を抜けなくなるじゃない」

秘法眼という名の黒い虹彩に獰猛な色がゆるりと点滅する、それを義王は見逃さなかった。義王を惹きつけて止まぬ黒い閃き。血の温度が上がっていくのが判る。

「はッ、よく言うぜ大将……手なんざ抜いたコトも無えくせに」
「お前は俺をどうにも買い被り過ぎてるよ、義王」

そう言って、義王にしか判り得ぬ色を宿したまま、七代千馗はふんわりと淡く笑う。
こういう顔を見る時、義王は、心の底からこの男が欲しいと思うのだ。

何も七代千馗のちからばかりを求めているわけではないけれど、この男と戦うのはやはり何より楽しく、神経を焦がすような遣り取りは義王をひどく酩酊させる。
そしてふと気付いた。
この男の持つ温度が妙に違っているからこそ、自分は躍起になるのだろうかと。普段は見えぬその色を追い、求め、引き摺り出そうと。
けれど結局、義王にはどうでも良い事である。
自分がこの男の中の何を求めていようとそれがこの男の内にしかないのなら、義王の欲しいものはやはり七代千馗なのだから。
義王の欲しいものが七代と戦うという事だけでなく七代全てなのだという後半分の事実を、この男は得られるのだろうか。それとも義王が七代の秘める後半分とやらを得るのだろうか。
互いに、互いの秘めるものをちからづくで奪い合うというのも大層面白い。
義王は、突き上げる愉悦に任せて笑みを浮かべた。

「早く始めようぜェ、大将ッ」

地下の体育館まで下りていく間も惜しい。

嗚呼、もういっそ、このまま閉じ込めてしまおうか、それとも鴉乃杜まで出向いて攫ってしまおうか。

ふたつとない宝を眼前に、盗賊王の掌がぶるりと疼いた。















-----------------------------------------------


鴉乃杜に乗り込んできた分は、このドア一枚で勘弁してやる。

と、七代千馗が言っています。




スポンサーサイト

鬼祓師小話 | comment(0) |


<<十六連打並 | TOP | お返事です>>

comment











管理人のみ閲覧OK


| TOP |

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。