melancholia//サイトの更新履歴兼、その時々のプレイゲーム日記、二次文章など。
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2010/07/14 (Wed) 鬼祓師小話 / 第四弾、鬼印盗賊団と七代の場合

色々拍手を有難う御座います!
やはり雉明優勢ですか。文章の内容だの出来だのもあるとは思いますがこれは意識調査で雉明が一馬身開けてトップ、というのと連動しているのかしらと思っております。
さすがヒロインだぜ。

さて、これで一応最後ですね、第四弾です。鬼印です。
オカシラの台詞は打ちにくいですね!長英とは違う意味で……



暑中お見舞い申し上げます!





鬼祓師春夏文章 『寄る水辺』





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『寄る水辺』








「涼しいなああああ…………」



寇聖高校、地下に造られた屋内プール。
その青い水の中へ肩まで身体を浸し、七代千馗は恍惚とした表情を浮かべていた。
まるで温泉にでも浸かっているような七代の様子に半ば呆れながらも、それを眺める鬼丸義王の顔は何とはなしに嬉しそうだ。同じく水に浸かった状態で、義王が胸を張ってみせる。

「ハッ、暑いからってぐだぐだしてやがるテメエの姿なんざシャバくて見れたモンじゃねェからな!精々オレ様に感謝しな!」

至近距離の大音量に七代はやや辟易したが、水の冷たさがあまりに心地良いので、自然と沸き出る棘も丸くなる。
この暑い最中に寇聖まで来い、という義王からのメールを受け取った時、九割ほど無視を決め込むつもりだったのだが、あとの一割である良心に従っておいて本当に良かったと己の判断力を頻りに褒めながら、七代はきらきらと光る水面を愛おしそうに撫でていた。

「うん……いいわ、もう何でも……」

夏に弱い七代が暑くてぐだぐだしているのは事実だったが何も義王の前でそうであったわけではないし、義王には何も迷惑はかけていない筈で。加えて顔も合わせていないのに何故己の状態を知っているのだろう。
呼び付けた義王に対し様々な疑問は尽きなかったが、全て忘れてこの快楽を有り難く享受しておこうと七代は考えた。相手は鬼丸義王である、下手につついてそれが面倒な事に発展しないとは全く言い切れない。わざわざ自分から面倒な火種をつつくほど、七代は暇を持て余してはいないのである。

「イイ施設だろ?」

現金な事を考えている七代を余所に、義王はぐるりとプールサイドを見回した。
その視線はとても誇らしげで。こっそり作った秘密基地を披露する時の子供のそれによく似ている。

「あっちには飛び込み台もあるんだぜ」

義王の指差す先を見遣ると確かに、白い塔のような飛び込み台がそびえ立っていた。

「へえ……」

確かにそれをすごいとは思うのだが。如何せん高所というものにあまり愛着を持たない質なので、七代の返す相槌にはどうにも熱が籠っていない。
けれど何となく、義王はあれが好きなのだろうと思った。何の根拠も無かったが、あの天辺から何度もプールへ飛び込む義王の姿が七代には容易に想像出来たので。

「まあ俺は跳び込まないけど」
「そうだろ、すげえだろ」

変わらず胸を張る義王の耳はとても都合のいい構造になっているようだ。
こっそり嘆息している七代の許へ、投げられていた義王の視線がふと戻ってくる。そうしてとても義王らしい強い笑みがその口許に上った。

「ま、カラスじゃこうはいかねェよなァ?」

不敵に吐かれたその言葉に対し、七代は首を傾ける。

「冷房設備でさえ満足に整ってねェって話じゃねえか、大将?」
「お前は何が言いたいの」

義王は。腕を伸ばし、プールサイドの壁に凭れかかっていた七代の脇に両の掌をついた。
義王の腕に囲われるかたちになった七代はしかし表情をひとつも変えず、先刻よりも近付いた義王の眼をただ静かに見詰め返している。
波打つプールの水面が素知らぬ顔でぱしゃりと涼しげな音をたてた。

「……判ってんだろ」
「何を?」
「寇聖に来いッつってんだよ……、テメエの籍くらい朝飯平らげる前に用意してやらあ」

そう言って笑う義王の犬歯が一層鋭利に閃いた。けれどやはり七代の表情は変わらず。

「…………またその話、か」

七代は苦笑に似た嘆息を吐いて、顔を逸らそうとしたのだが。
義王の掌が七代の頬を押さつけ、それを許さなかった。義王の濡れた手から七代の顎へ滴が伝い落ちていく。七代はほんの僅かにだけ眉を顰めた。

「千馗」

一層落とした声音で、義王が七代の名を呼ぶ。
ああ、頭領たるこの男は、さすがに己の使い方をようく心得えている。
そう思いながら七代は、義王の眼の中で燃える獰猛な炎の色を眺めた。

「テメエみたいなのにカラスなんざ似合わねェって言ってんだよ……テメエは本気であんな微温湯みてえなとこで満足だってのか? テメエの胸に手ェ当ててよっく考えてみろ」

頬を捉える掌を、七代は笑って払い。伝い落ちる水滴を甲で拭う。

「てめえみたいなの、って何?」

そうして、覆い被さるようにして距離を詰める義王の身体を足の裏でもって蹴って離し。七代は薄い笑みを浮かべながら肩を竦めてみせた。

「……俺はさ、単なる活字好きで、喧嘩嫌いの、ものすごく平和な男だよ。微温湯?どんと来いだっての、なあんにも不満なんて無えし。お前は俺の事を大分誤解しちゃってるんじゃない?」

何度も何度も義王を地に伏させ、秘法眼という名の黒い虹彩を嫌という程その身に刻みつけた七代千馗は、事も無げにそう言って緩く笑った。
戦いのさなか、どれほどその眼に義王と同種の獰猛さをあらわしていようとも、神経を焦がす刹那の遣り取りの中でどれほど口許を笑みに歪めようとも。七代は平気でそう言い切るのだろう。
七代のそれを卑怯であるとも偽善であるとも義王は思わない。この男はそれを隠したいわけでも自覚していないわけでもなく、ただ単にそれらが己の一部分に過ぎぬ、と言いたいのだ。決してそれが己の本性であるわけではないと。だから義王の言葉をたびたび否定するのである。
尤も、七代千馗のそうした一面を理解するのは己だけでいいのだと義王は思っていたし、他の面こそ主であるという主義主張に関しては全くもって興味が無かったが、義王の血を恐ろしい温度で沸かせたあの眼の色を捨てる事だけは許さない。

隠し遂せると思うな

どうせ七代自身がたとえ捨てたくとも捨てられるようなものではないのである、下へ押し遣ろうというのなら義王がそれを引っ掴んで引き摺り出してやるだけだ。己の眼の前に。
義王は七代千馗のその色にこそ、惚れたのだから。

「はッはァ、上等だァ大将!」

だから、義王は七代の言葉に対し欠片も退かず、それを盛大に笑い飛ばした。

「テメエがそのつもりなら、オレ様は無理矢理引っ張ってくだけだぜ!」
「、むりやり?」

夏の暑さに参っていた筈の七代が、何処か寒そうに肩を竦める。

「勝負だッ、大将!五十メートルどっちが速えェか競争してテメエが負けたら、そん時は鈍牛にゃ悪ィが大将は寇聖が貰う。まッ有り得ねェ事だがオレ様が負けたら今日のところは退いてやる……そんでいいだろ!」
「いっ……、いやっ、待って、それどう考えても比重がおかしいから!」

思わず七代はそう突っ込んだが、義王が耳を傾ける筈は無い。

「よっし、そーと決まれば身体を慣らしとくか!いいな大将、勝負は今から十五分後だッ!不戦勝なんざこっちもつまんねェからなァ、ちゃあんとテメエも準備しとけよ!」

悪者らしくそう言い残し。義王は、物凄い水音を上げてコースの端まで泳ぎ去った。
咄嗟に避ける事も出来ず、水飛沫を全て被ってしまった七代の髪から、ぽたぽたと水が流れ落ちている。

「……あ、の、馬鹿猪っ……」

まず何に対して腹を立てるべきかとその項目の多さに打ち震える七代の頭へ、突然ふわりとタオルが被せられた。
鼻先に漂うのは柔軟剤の匂い。頬に触れるとても柔らかいそれを掴み、振り返ると。すぐ眼の前に携帯電話が突き付けられていた。

「…………、」

とても鮮やかにして濃い色彩のそれは、紛れもなく七代のものである。

「全く、荷物を全部置いていくやつがあるか……無防備にも程がある」
「、ミギー」

制服姿の鹿島御霧が、プールサイドから仄かに挨拶のような微笑を浮かべた。

「これは防水仕様じゃないんだろう? 俺は此処に居るから預かっておいてやる……安心しろ、誓って中を覗いたりはしないし着信があればすぐに教える」

一体いつから御霧は様子を見ていたのだろう。七代が来る事は最初から知っていたのだろうけれど。
ぼんやりと考えながら、渡されたタオルで有り難く髪と顔を拭き。ひとつ嘆息して七代は首を傾けた。

「無防備っていうか、うん、まあ、えっと、それはどうも有難う。それよりさあミギー、お前んちのオカシラちょっとどうにかして? 涼みに来ただけなのに勝負って……しかも鬼設定だしさ」

言って、七代は同意を求めるように御霧の顔を見た。御霧はその視線を一瞬だけ受け止め。それから、五十メートルのコースを独特のフォームで泳ぎ切る義王を遠くに眺めながら眼鏡を上げる。

「あいつは確かにどうしようもない馬鹿だが…………、まあ、勝負の話は俺も賛成だ」
「……………………っえ、」

嘆息混じりに言うのでてっきり賛同してくれるものと思い込んでいたのだが。七代は思いがけない言葉に息を詰まらせた。けれど御霧の方は涼しい顔で、驚いた様子の七代の顔を少し面白そうに見詰めている。

「……ミギーはちゃんと反対してくれると思ってたのに」

恨みがましく唇を尖らせた七代を笑い。タオルに覆われた七代の頭をぽんと叩く。

「俺も……お前は鴉乃杜に居るべきじゃないと思っている。お前みたいな男をあんな微温湯のような場所に埋もれさせておくのはどう考えても惜しいからな」
「まー、オカシラとおんなじ言葉使っちゃって」
「寇聖の方がよりお前に適している、俺はそう思う。……だから七代、悪いが俺は今回あの馬鹿の方を応援させてもらうぞ」

御霧の言葉に七代は盛大に眉を顰めた。

「まじすか」
「残念ながら、まじだよ七代」

御霧がそう言うと七代は、うえーとかうおーとかいう唸り声とも悲鳴ともつかない声を上げながらタオルで顔を覆ってしまった。
勝負をするのは七代千馗と鬼丸義王である。そしてその方法は五十メートル競走で。つまり御霧の考えがどうであれその勝敗に何ら影響は及ぼさない筈なのだが。この男は何故こうも肩を落としているのだろうと御霧はやや愉快な心持ちでその様子を眺めていた。

「俺だって…………、お前が毎日傍に居る方が、色々と、得られるものがあるだろうし、な。何もお前の為ばかりじゃない。お前が寇聖に来るって事は、俺の、為でもあるんだ」

言えば。七代は顔を上げてじっと御霧の表情を確かめた。御霧の方は早々にその視線から逃れてしまったのだが七代は別段気にする風でもなく。重そうな息を長く長く吐いている。

「で……、オカシラは遊べる玩具が欲しいから、だろ」

御霧は何となく七代からタオルを剥ぎ取りたい衝動に駆られたのだが、それを何とかやり過ごしてまた眼鏡を上げる。

「……義王にとってお前は、玩具というより………………、……いや、まあどうでもいい」
「いいんかよ」
「俺には関係の無い事だからな。それよりも七代、お前はウォーミングアップをしなくてもいいのか? 義王の身体能力についてはお前もよく知っているだろう。あいつは当然、見ての通り泳ぐのも速いぞ? まあ、お前がハナから勝負を捨てていると言うなら俺の方は一向に構わないが」

御霧の指差す先で、白い水飛沫の上がるのが見えた。遠目に見ても誰が見てもとても気合いが入っているらしいそのクロールに七代はげんなりして、御霧の手を引いた。

「あのさミギー、いっこだけ、お願い」

掴まれた手に触れる冷たい掌の感触にばかり気を取られながら、御霧が七代の方へ耳を寄せる。

「……なんだ」
「ミギーが義王派でもいいからさ、せめて、アンジー呼んで来て……、じゃないとテンションがぜんっぜん上がんないから」

アンジーだと?

思いも寄らぬその名を御霧が問い返す前に、七代はぱちりと片目を瞑った。全く可愛くないその仕草に御霧の眼が胡乱になる。

「勿論、水着スタイルでよろしく」

たっぷり一分。七代と御霧はじっと見詰め合い。そしてこの上なくきっぱりと。

「…………だが断る」

要求を受諾してもらえなかった七代千馗は更にぐったりとし、このプールへ来てしまった己の浅慮を今更ながら後悔した。















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特別きもちわるい七代千馗で悪かった、ミギー……




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