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2010/07/10 (Sat) 鬼祓師小話 / 第一弾、鍵と七代の場合


先日からアレ、アレ、と曖昧な指示語で示していたアレ。
七代千馗がもしも春に来て夏を過ごしていたら、といういわゆるイフ設定にてお送りする
暑中お見舞い申し上げます、の文章です。
(長過ぎるのでとりあえず春夏シリーズという事で……)

続きものとかではありませんが、夏の小話連作という感じで幾つか。短めのを。
現時点での予定は四ツ、なのですが、もう少し増えるかも知れません?
暑いのはきらいですが夏は小道具がたくさんあっていいなあ。

そんなわけで第一弾は、鍵さんと七代です。

改めて、暑中お見舞い申し上げます!





鬼祓師春夏文章 『日陰』






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『日陰』







涼しげであると言えなくもないが何処か絡みついてくるような。
そんな声音がくつくつと笑いながら近付いて来た。

鴉羽神社母屋の自室。
其処で倒れるようにひとり横たわっていた七代千馗が、ひどく大儀そうに視線を其方へ持ち上げると。襖を開けて立っているのは、男のかたちをした人間ではないもの。鍵という名の、狐の神使である。
人とは少し違ったところに在る獣の耳が、ぴんと尖って立っている。
それを見るなり七代は、顔ごと視線を鍵から背けさせた。
わざわざ問わずともあの耳を見れば、ぐったりとした此方の様子を面白がっているのだという事が充分に判ったので。

「坊、随分と弱ってやすねえ、こりゃあ」

狐は堂々とした所作で開けた襖を元の通りに閉じ、そして七代の傍らへ腰を下ろした。
足音も衣擦れの音も聞こえない、けれどこれは、確かに此処に居る。

「無敵の七代千馗殿にも弱みがありやしたか。いやいや、こりゃあ意外な事で」
「…………面白そうに言うな、この、暇人」
「残念ながら私ゃ人じゃありやせんから」
「………………………暇狐」
「坊は本当に面白いですねえ」

奇妙な形状の煙管を咥えながら、鍵はぺたりと横たわる七代の首筋に掌を当てた。

「ああ、確かにいつもより体温が高くなってやすねえ」

そう言うものの、鍵の声音は何処までも楽しげで。其処に七代を心配するような色は全く無い。
苛々と、七代は自身の喉許から鍵の手を払い除けた。

「触んなって、暑いから」

そもそも、夏が苦手だから、暑いのがいやだから、七代は此処でこうしているのである。それなのに楽しそうに面白そうに覗き込まれてしまっては、巣食う不快感が増すのも当然だろう。
手を払われた鍵はけれど表情を少しも変えず。むしろ先刻よりも笑みを深めて首を傾けた。

「おや?何度も言うように私は人じゃありやせんから、こうして触れても体温みたいなもんは感じない筈ですがねえ?」

飄々とした鍵の声音に、転がったままの七代が顔をしかめる。
此方に嫌がられる事がこの狐の喜びなのだろうかと、七代は熱暴走を起こしかけている脳でもって考えた。

「…………そりゃそうだけどそういう事じゃないんだよ。お前が暇を持て余しててものすごい退屈だってのは充分判ってるけどさ」

嫌がらせをして喜ぶのならサディストだが、嫌がられて喜んでいるのならそれはマゾヒストだ。この狐は果たしてどちらなのだろう、当人へ訊ねてみれば判明するのだろうか。
機能の低下した頭でだらりと七代がそう考えていると、先刻払った鍵の手が顔の丁度脇へ下りた。
七代の上へ圧し掛かる、鍵のかたちをした仄暗い影。七代の胸の奥で警報のようなものがちかちかと点滅する。

「そうですよ」

見上げる七代の視界の中で鍵の口角が吊り上がった。上体を少し前へ倒した所為で、濃い黄金色の長い髪が肩口から流れている。

「坊が、このところ全然顔を見せに来て下さらないんでね…………全く坊はつれないお方だ。私だけじゃなく鈴だって、坊の事を心配してやすよ?」

鏡で映したように同じ角度で七代の口角も吊り上がる。

「つってもお前、またあの子をうまあく丸め込んでこんなとこ来てんだろ? 一体どの口がそんな事言ってんだよ、暇狐」
「ふふ、そのへんの事は坊のご想像にお任せしやす」

七代の悪態も全く功を奏さない。
何処吹く風で笑いながら鍵はそろりと、煙管の先端で眼下の皮膚を辿る。緩めた襟許から覗く鎖骨から始まり、つい、と喉仏を通って顔の輪郭を撫で、それから再び鎖骨へと戻っていく。
焦れるほど緩い速度で往復していくその感触に七代は眉根を寄せた。

「……だ、から、さわんな、って、暑い」

毒づくその声に明らかな艶が滲んでいる。
ゆるゆると皮膚のおもてを擦られる感触そのものに反応しているのか、それとも過去の経験がその先に在るであろう刺激を連想しているのか。どちらにしても敏感な事だと鍵は内心笑いながらもそれを口にはせず、ただ変わらず笑って、唇を其処へ落とす。が。首筋に接触する前に、七代の手によって阻まれてしまった。

「暑い、って言ってんのに」

もう既に快さを感じている筈なのに七代の主張はまだ変わらないようで。
鍵は、防御しようとする強情な手首を掴んで退けようとしたのだが、するりと擦り抜けてそれは逃げてしまった。半ば無意識の舌打ちを七代は耳聡く拾ったらしく。冷えた眼差が鍵を睨みつける。

「なんです……坊だってきもちのいい事は好きだと仰っていたじゃありやせんか」

鍵のもう片方の手が七代の脇腹を捉えてざらりと撫で上げると、七代の身体が畳の上で跳ねた。

「、っ……」
「人肌同士を重ねるならいざ知らず、幸か不幸か私は神使ってやつですからねえ? こうして触れても坊は暑かない筈ですが?」
「だ、っか、ら、」

シャツの裾から厚かましく侵入して腹を撫で、そうして胸の方にまで上ろうとしている鍵の掌を、思い切り払い。先刻まで暑さに項垂れていたとはとても思えぬ動作で、七代は勢い良く身体を起こした。

「お前が暑いんじゃなくて!俺の体温が上がるからやめろって言ってんだよ、この馬鹿狐!」

突き飛ばされた鍵は突き飛ばされた形のまま、さすが洞でも俊敏さを頼みにしていただけの事はあると一瞬全く見当外れの事を考えてしまった。恐らく、七代の口にした言葉が全く予想だにしないものだった所為で。

「、坊」

遅れてやってきた波のような笑いの衝動を腹へ必死に押し込めて鍵は其方に手を伸ばしてみたが、七代が毛を逆立てた猫よろしく再びそれを叩き落とす。この猫を懐かせるのは然程難しくはないのだが、気紛れな気性をうまく扱うのはなかなかに簡単ではないようだ。
今度何か餌になるようなものでも探しておこうかと考えながら、沸き上がる笑みを袖で隠しておく。笑ったりすれば余計に油を注いでしまう事は眼に見えているので。

「成程…………、坊の体温が、ね、そりゃ盲点でしたが確かに仰る通りです」

けど、坊

言い掛けて首を傾ける。

「坊は、私がそう言われて、はいそうですかって笑って引き下がると、本気で思ってるんで? だとしたら坊はまだ残念ながら私の事を理解して下さってないって事になりやすねえ。愛がちいと、足りてやせんや」

鍵の笑みから立ち上るのは退屈凌ぎの玩具を見付けて逸る愉しさなのか、それとも単なる意地なのか。どちらにせよ、それが黒い色をしている事には変わりが無いようだ。
鍵の吐く可笑しな台詞に自身の血が早々沸き上がってくるのを指先で感じながら、七代は負けじと笑って口を歪めてやる。

「…………上ッ等…………、やれるってんならやってみろよ」

そうする事も結局暇潰しという狐の目的を果たしてしまうのだという事を重々自覚してはいたけれど、それでも七代は抗わずにはおれなかった。夏の暑さは本当に嫌いだが、七代千馗にはそれよりも我慢出来ない事がある。
言いなりになって、流されて、結局負ける、など。
全く、言語道断である。

このくそ暑い時にくそ面倒臭え

そもそも七代は、何の為に此処で一体何をしていたのか。

幸か不幸かそんな事はもう、どうでもよくなっていた。















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鍵さん流夏バテの治し方だった、って言ったら信じて頂けますか…(荒療治)。



いいかげんせくはら以外の文章も書きますすみません、鍵さん貴重なエロ要員だからつい。





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