melancholia//サイトの更新履歴兼、その時々のプレイゲーム日記、二次文章など。
--/--/-- (--) スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

スポンサー広告 |


2010/06/04 (Fri) 鬼祓師小話 / 情報屋と七代

うー…ん…………、もしかしたら、後で下ろしてしまう、かも……

ミギーと、絢人と、七代です。八話の。

絢人がすごいこわい人になってしまいました……
多分いつもこんなでは、ない、筈。だと思いたいけれども。

そんなアレなアレで宜しければ追記から。








情報屋小話 『氷菓子』








------------------------------------------------------



『氷菓子』









とても甘いようで、それでいて全然甘くないような、ちょうどそんな口当たりの






歌舞伎町にある喫茶店ドッグタグ。

カウンター席に見慣れぬ顔を見付けたので、七代千馗はとりあえず声を掛けてみたのだが。
隣に腰掛けてノート型の端末を広げているその男、鹿島御霧は、ほんの少しだけ困惑したように呟いた。

俺に足りないのは何なのだろう、と。



テーブルに頬杖をつきながら七代は、そう呟いた男の顔をよくよく観察してみる。
妙にきれいに切り揃えられた艶のある黒い髪に、すっきりと切れた眼。
銀縁の眼鏡に象られている所為で一層怜悧な印象を受ける。
あまり肉のついていない薄い首許にはやや不似合いな黒い首輪。
それを見るだに七代は、この装飾具が果たして彼自身の意志によるものなのか、はたまたかの頭領が所有物である証として強要しているものなのかと、とても気になってしまうのだが当人たちに訊ねた事はまだ無かった。
鹿島御霧というこの男を見る時、七代はいつも、何処か張り詰め過ぎた危うさのようなものを感じていたのだが、その影は今少し薄れて見える。
大きく大きく深呼吸をした後のような。
肩に溜まっていた力が甚だ余分であった事に気付いてするりとそれを抜いたような。
今、此処に居る御霧は以前よりも余程、自然だった。

そして呟いたのがそれである。

常に他者を眼線の下へ置くような物言いをして、その裏で貪欲に力を欲し、自身で自身を狭窄させていたあの男が。
厭味なほど冷えていたあの表情の色が今は鳴りを顰めていて。

「………………何かが足りないって、思ってるんだ?」

なんとなくそれをかわいいとも微笑ましいとも思いながら七代は、水を差さぬよう浮かびかけた笑みを口腔へ押し込める。
御霧はキーの上へ指を乗せたまま嘆息を落とした。

「思っている、じゃなく、単なる事実だ…………
 今の俺は情報屋として香ノ巣よりも確実に何かが足りていない。
 悔しいが、そういう事なんだろう」

情報を取り扱う、という事に対して一片の知識も無い七代は曖昧に応えるしかなかった。
そもそも得た情報量がどうだとか、得るまでの早さがどうであるとか、どうやってそれらを比べるというのだろう。
七代には全く想像も出来ない事である。

「うん…………、まあ、俺は情報屋じゃないからな、
 技術的な事とかさ、そういう事は全く判らんけど…………
 いいと思うよ俺は、そういうの」

七代の言葉は少し感覚的過ぎるので、言われた御霧は訝しげな顔をする。

「そういうの?」

相変わらず頬杖をついたまま、御霧の眉間のあたりに指先を触れさせた。
びくりと驚いたようだったが御霧の身体は後ろへ引かない。
七代の口許に笑みが漏れた。

「今の自分に何かが足りないっていうのをちゃんと自覚して、それを認めて、
 じゃあそれをどうしようかって考えること。
 そう考えられてるうちは、多分、伸びるんじゃない…………
 まあ、情報屋のレベルアップにどういう経験値が必要なのかは俺には判らんけど」

何故、だからといって七代が嬉しそうな顔をするのだろう。
御霧は何かを誤魔化すように七代から視線を外した。
冷えてしまった手許の珈琲は、舌に乗せても妙に味がしない。

「ふん。
 負けている現状に腹が立つだけだ」
「ガッツ、いいんじゃないの?
 負けず嫌いな方がいいって、自分の為には」
「お前も負けず嫌いだろうが」
「は、俺?
 俺にはそういう素晴らしい精神は備わってないよ。
 面倒臭いのが先に立っちゃうからな、どうにもこうにも」

そう言って軽く笑う七代の様子を、御霧はやや憎々しげに見詰めている。
今まで幾度となく戦いを挑まれ、そしてそのたびに毎度相手を遠慮無く叩きのめした事。それを七代は忘れたのだろうか。
初めは口にする言葉の通り、ひどく面倒臭そうに、億劫そうに、大義そうに、のろりと玩具を構えるのだが、(そうだ、七代の手にするものは何度見ても、どう見ても、玩具なのである)血が温まり切らぬうちに此方から畳み掛けて潰してやろうとしても、ぬるい温度のままいきなり容赦無く札を撒くのである。
相手を吹き飛ばす札ばかり何枚も飛ばし、此方がそれに気を取られ、とにかく間合いに入る手段ばかりを考えているうちに遠方から射撃する。
大して動きもせずに、正確に。
業を煮やしながらこの男の表情を確かめると。上辺は欠伸を噛み殺しそうなくらいに緩いまま、けれどそこに光る秘法眼はとても鋭利で。
白刃に宿るような七代の眼を見、そこで初めて気付くのである。
この男の沸点を、上っ面だけで判断するのは間違いなのだという事に。

「…………お前のそれが口だけだって事は、もう身に染みて理解しているがな。
 それともそれは作戦なのか?油断を誘う為の」
 
正面から訊いてやると、七代は煙に巻くように肩を竦めた。

「そんな大袈裟なもんじゃないって、ミギーは考え過ぎ。
 面倒臭いのは本当だよ。
 誰かさんたちが喧嘩をふっかけてこなきゃ、面倒も少なくて良かったんだけどねえ?
 面倒臭いから、……まあ、早くキメようと、思ってるところは、あるけどな」

戦うのが面倒だから、出来得る限り早く勝ってしまおうと。
何度も戦いを挑んだ身として御霧は、七代の本音に苦笑するしか無かった。

「……………………とんだ物臭もあったものだ」

そうして、この物臭な男は面倒だ何だと散々口にしながら向かってくるものを退け続け。
弱いところにうまい話を吹き込まれて方向を見失った御霧らを、強引に此方へ引き戻したのだ。
敵だったというのに。
否、この男はずっと自分たちを敵であるとは思っていなかったのだろうか。
敵にも値しないと?
或いは、敵としては、見られぬと?
その問いを、御霧は七代本人へかけないまま腹の底へ仕舞い込む。

「…………それで、さっきの事だが」
「うん?」
「俺に、足りないものの話だ」
「ああ、うん」
「お前は…………、なんだと思う?
 今の俺に足りないもの。
 お前には何だか判るか?」

口にしながら御霧は、七代へそう訊ねる己の事を全く正気の沙汰ではないと感じていた。
脳裏で自分の欠片が大笑いをしている。
己に足りぬものを他人に訊ねるなど。しかも問い掛けるその相手は何度も拳を交えた男。
少し前の御霧なら絶対に、死んでもやらなかっただろう。その自覚は充分にあった。
けれど御霧は結局その言葉を唇から零したのである、それは、そうする事が間違いでないと、他ならぬ鹿島御霧の大部分が判断した結果なのだ。

「ミギーにたりないもの、」

問い掛けられた事を少しも不思議に思っていない様子の七代は、御霧の顔をじっと見詰めながら思案するように首を傾げている。
御霧の方も、その七代の顔を眺めながら返答を待った。僅かな子供っぽい期待を持って。
別段、正しい答えを求めているわけではなかった。
ただ御霧はこの男ならば何と言うのだろうかと、その事に興味を引かれていたのだ。
そして何となく気付く。
自分の計算も、思惑も、策略も、何もかも一切をこの男に飛び越えて欲しいと、己がそう望んでいる事を。
それは鹿島御霧にとって、ひどく意味不明でひどく本末転倒な望みである。

悩んだ末に、そうねえ、と前置きをして。
七代は笑いもせずに真顔で言った。

「愛、なんじゃない?」

御霧は一瞬、それが日本語であるとは思えなかった。
七代千馗が何を言ったのか判らなかったからである。

「愛」

けれど七代は丁寧に繰り返した。
七代の口にした言葉は御霧の抱いた期待と寸分違わず、本当にやはり、突拍子も無かった。

「……………………あい?」
「そう、ラブ、ね」
「いや、英語に訳してくれなくてもいい」
「そう?なんか通じてなさそうだったから」
「時として日本語であっても言葉が通じない時はあるだろう」
「、ああ、オカシラの事?」
「いいやお前も同じだ」
「まじで」

御霧がそう言うと七代は、いかにも心外だという風に眉を顰めた。

何を馬鹿な事を言っているのだと、怒鳴りつけるのは簡単である。
しかし、この男にその問いを投げたのは他ならぬ自分なのである。
或る意味で、突飛な返答をこそ求めたのも。
だから御霧は辛うじて七代の言葉を受け止め、真面目にそれへ対し考えてみる事にした。



自分にそれが足りないというのは、一体どういう意味なのだろう。
それは確かに足りていると胸を張って反論出来る程の自信も根拠も、御霧の中には無いのだが。

「…………確かに、あいつは愛だの何だのと常にそれしか口にしてないような奴だが。
 しかし、だからといって、」

現時点で御霧の先を行っている香ノ巣絢人の素行を思い起こしてみる。
あの男の変態気質は確実に御霧には存在しない部分だろう。
しかし。それが判ったところでどうすれば良いのか。
御霧は唸るしかない。

「じゃあ何か、俺にもああいう全く度し難い変態行為を真似しろとでも言うのか?
 真似をすれば絶対に情報屋としてのスキルが上がるのか?
 お前の言う事を信じないわけじゃないが、こればっかりは、」

隣で七代はカフェオレを飲み干しながらカップの底を眺め、口角を上げる。

「誰もそんな事は言ってないだろ。
 まあ、殴られたがるミギーってのも怖いもの見たさで見てみたい気もするけど、
 ちょっと夢に出そうだからよして頂くとして……」

空になった白いカップを置く。
その七代の指は、戦いの中に身を置いている割にとてもすんなりとしていた。

「そうじゃなくて。
 誰かに愛を注いでみたら、って、俺は言ってるんだけど」

そう言いながら七代は黒い眼を細め、御霧へ微笑んでみせる。
その笑みを映す御霧の視界が。
御霧にしか判らない程度にぎごちなく震えた。

こういう顔をして、此方を向いて、そう言うのは、卑怯、じゃないか

喉許で必死に声音を整えてから、御霧は鼻で笑ってみせる。

「誰か、って?」

そう返しても七代の笑みは変わらず。
御霧はそれを、とても恨めしく思う。

「誰でもいいよ、
 そしたら、ミギーはちょっと変わるんじゃないかなあ」

親身なようでいて、全く他人事のように言う七代の声音は、何処か雪に似ている。

誰かを愛してみろとひどく優しく微笑しながら言ってのけるこの男に。
ではお前を、と、もし返したのなら。
この男は一体どんな顔をするのだろうと、御霧は考える。

驚くのか、笑うのか、嫌がるのか、それとも、

その答えは御霧の脳を持ってしても、決して、算出する事が出来なかった。

「………………折角の助言だ、考慮してみよう」

御霧は苦笑する。

自分から手を伸ばして触れた筈のあまさは、いざ得てみればとてもとても、あまいものではなかったので。







一頻り鹿島御霧と話し終えた七代千馗は、珈琲代を支払ってから店を後にしようとしたのだが。
するりと絡めるように腕を取られて思わず立ち止まる。

「君は相変わらずつれないねえ千馗くん」

ゆったりと薫るような声音。

「、香ノ巣」
「僕の存在に気付いていながら何故君は僕には声を掛けずに立ち去ろうとするのかな」
「いや……、その方がお前の好みに合うかと思ってさ?」

七代はそう言ったのだが。
御霧からやや離れた席に座っていた香ノ巣絢人は、潜む感情の色を確かめるようにじっと七代の顔を凝視した。
整った造作から伸びるその視線に押され、七代の眼があらぬ方へ逃げていく。

「まあ、そうだね、
 君が僕を喜ばせてくれようとしたのなら、これほど嬉しい事は無いけれど」
「お前の琴線が何処にあるかってのは、俺には把握が難しいとこだけどな」

肩を竦めながら七代は、己の腕を少し振ってみせた。
腕を離せと言いたかったのだが。
うつくしく微笑みながら絢人は何故か、掴んだ腕を離そうとしない。

「千馗くん」

名を呼ぶ絢人の唇に浮かんだ微笑はひどく意味ありげである。

「僕は、君のそういう、つれなくてつめたいところも、存外気に入ってるんだ。
 君のつめたさはひんやりとしていて、とても心地がいい」

何の話をしているのかと七代が問う前に、絢人はくすりと笑った。

「心地がいいと感じるのは、それがあまいからさ、千馗くん。
 君は、つめたくてあまいんだ。
 君自身がそれをどうやらあまり自覚していないようだから少し、心配になってね」

絢人の言葉に全く心当たりらしいものもなく、七代は謎掛けのようなそれへ嘆息した。

「…………相変わらず判んない事を言うなあ、お前は。
 一体何が言いたいの」
「何、彼の事さ」

ほんの少し絢人の声音が密やかになり、視線が一瞬だけ鹿島御霧に触れる。
其方を振り返らないまま七代は、絢人を捉える視線を少し細めた。

「……あいつが、なんだって?」
「失敬、君たちが音量を下げないものだから、少し耳に入ってしまってね。
 あの盗賊団の参謀を仲間に引き入れたなんてさすがは千馗くんだ、恐れ入るよ」
「いいよ、そんな事は、」
「ふふ、僕としては君ともっと会話を楽しんでいたいけれど、
 こんな話し方では君に嫌われてしまうかな?
 ではもう少し真直ぐに言うとしようか…………」

そこで一旦言葉を切って、絢人が七代の表情を改めて窺う。
絢人の眼に映る七代はやや不機嫌な顔をしていた。
その事に絢人は少し笑って。それから勿体をつけるように継ぐ。

「君が、あまりに酷な事をするから。
 それが、気になっただけなんだ」

こくなこと

七代には絢人の言う事が判らない。

「彼は恐らく君のあまさを愛するだろう。
 きっとね、これは確信出来る。
 けれど彼は、君のあまさがつめたさと一緒に在るのだという事を
 ちゃんと知ってるんだろうか?
 僕が懸念しているのはその一点だ。
 僕はいい、君のそのつめたさもあまさも同じく気に入っているから。
 でも、それを知らないのだとしたら?
 見せない君の遣り方はいかにも残酷だよ、千馗くん。
 さすがに少し、彼の事が気の毒になってしまうな」

絢人の吐く言葉は七代の鼓膜へ、いつまでも溜まった。
咀嚼されずに形を残して。
その表面だけを何となくぼんやりと撫でながら、七代はようやく口を開いた。

「……………………なあ、訊いていい?
 そもそも、俺は、冷たいかな?」

七代の問いに、絢人は綻ぶような笑みを浮かべて応える。

「つめたいよ、知らなかったのかい?
 誰にでも無料配布するようなあまさは、つめたいものなんだよ。
 自覚が無いなら、尚の事ね」

ほんの少しだけ砕かれた言葉の欠片が七代の腑に落ちた。

「…………俺はさ。
 お前の言うような甘さも冷たさも、持ってないつもりなんだけど」
「ああ。
 そうだね。そうなんだろうね。
 いいんだよ、僕は今の君をこそ、気に入っているんだから」

微笑みながら絢人は、ようやく七代の腕を解放する。

「引き止めて悪かったね、君も色々と忙しいだろう?
 僕も君の役に立てるよう頑張っているから」
「、香ノ巣、」
「それに、気の毒と言っても、それは本当はどうでもいい事なんだ。
 心の底からそう思ったわけじゃなくて」

そうではなく

「…………結局、僕が言いたかったのは。
 嫉妬した、って事だけだから」


 
素知らぬ顔をして笑みを撒いて、そうして放ってしまう七代千馗が少し憎らしくて。
他へ笑む姿があまり面白くはなくて。
だから、忠告という名の釘を刺してしまったのだ。
七代千馗の差し伸べる掌の温さを絢人は知っている。
知っているからこそ判る、あの男もまた、その熱に心を奪われるであろう事が。
それを自覚した時、あの男ならどうするのだろう?
絢人は唯一その事にだけ、少し、興を覚える。



意味を計りかねて茫然とする七代を眼前に見詰め。
絢人はとても楽しそうに、うっとりと微笑んだ。





とても甘いようで、それでいて全然甘くないような、その口当たりはとても酷くて心地が良い
















-------------------------------------------------------------------




人、ラァブ!
ただでさえ情報屋なのにもし人ラブ!になっちゃったらどうすれば、というね。有り得ん。

主人公というのはすべからくひどい生き物だよな、という話。





スポンサーサイト

鬼祓師小話 | comment(0) |


<<ゲーム腐脳 | TOP | お返事です>>

comment











管理人のみ閲覧OK


| TOP |

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。