melancholia//サイトの更新履歴兼、その時々のプレイゲーム日記、二次文章など。
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2010/05/20 (Thu) 鬼祓師小話 / 主雉で銭湯

だから気力だけで書いたらひどい結果になるといったのですよぬしさま。

まとまりがなさすぎて書いた本人が悶絶している七代と雉明の話。
クリア後の話です。
クリア後の事が曖昧なのであまり突っ込んで書いてはいないのですが。

そんなもんにゃり文章で宜しければ追記から。




主雉小話 『奇跡の軌跡』








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『奇跡の軌跡』








寒さの所為なのか、冬の陽光というものは勢いが削がれていてとても、穏やかだ。



もう何百年か分の季節を眺めてきた筈なのに初めてそれに気付いた雉明零は、緩い光を見詰めながら一歩前を歩く背へ声を掛けた。

「…………出掛けに玄関で、清司郎、さん、は何を怒っていたんだ?」

メールの返事を打ち終えた七代千馗が、携帯電話を畳みながら顔を振り向かせる。
地球上に存在する人類の中で彼らよりも年長であるものは確かに居ないのだが、如何せん見目が見目である。
だから、幾ら年長であると言えど彼らが例えば羽鳥清司郎などを呼び捨ててしまうと、見目の所為でどうしても違和感が生じてしまう。
周囲で起こるその違和感について、雉明の方は何となく学んだようなのだが、かの片割れの方はといえば相変わらずそのままで。
そんな両名の性質を、七代は少し面白く感じている。

「清さん?
 ……ああ、いや、あれはいつもの事。
 別に怒ってたわけじゃねえよ」
「いつものこと?」
「前から言われてるの。
 白にな、小遣い渡し過ぎだって……一日千円って渡し過ぎかなあ?」

七代が白に小遣いを遣っていて、白がそれで飲み食いしているらしい事は雉明も知っているのだが。
現代の金銭価値について情報を全く持っていない雉明は、首を傾げるしかなかった。

「…………白は、何と?」
「いや、特に何にも聞いてない。
 渡してるとこからファストフードとか買ってるみたいだけど、
 まああいつが好きなのは安い方のやつだからなあ。
 足りないって事は多分無いと思うんだけど、清さんはあんま遣り過ぎると
 家の晩飯食えないから、って」
「、ああ」
「あいつも別に晩飯とか残すわけじゃないし、いいけどな。
 前はスナック菓子しか食わなくて大変だったけど」

そう言って七代は笑う。
白の事を話す時の七代の声音は何だか、何処かが違う。
吟味するように耳の奥で七代の声を繰り返しながら、雉明が微笑んだ。

「……………………ありがとう。
 白を、大事にしてくれて」

雉明の唐突な言葉に、七代は一拍固まって。
それから再び前を向いて歩き出す。

「別に、お前が礼を言うところじゃないって……
 あれはほら、俺の妹だから」
「いもうと?」
「そう」
「………………あね、じゃ、ないんだな」
「実年齢はこの際あんま関係無いから。
 まあ、俺があれをねえさんって呼ぶのも面白いとは思うけどさ」

白が七代のいもうとなら、己は何なのだろう。
実際経てきた年月が重要でないなら、七代と同級に見える己は、どうなるのだろう。
おとうとでも、あにでもなく。
七代の中では己は何、なのだろう。
それを考えていると、七代に腕を引かれた。

「ああ、ほら、あれだよ、見えてきたな」

言われて視線を七代の指先へ投げ掛ける。
成程、確かに今日の目的地が見えていた。






「ほんと、嫌でも思い出すわ…………
 裸の男が入り乱れて花札の取り合いして、結局お前のくれた札も取られるし、
 いや大変だったな、あの時は」

七代の声音が曇った空気の中に、わわわん、と響いている。
たちこめる白い湯気。
言われるまま雉明は小さな椅子に腰を下ろし、ずっと辺りを眺め回していた。

「これが…………、銭湯、」

己の声も湯気に滲む。
それが不思議で、雉明は口を噤んだ。
それからもう一度、あー、と声を出してみる。
羽鳥の家で風呂を使った事は勿論ある。
その拡大版であると言われていたのだが、実際に見てみると様々なものが雉明の想像とかなり違っていた。

「来たかったんだろ?」

雉明の隣で、七代は面白そうな顔をして雉明の様子を眺めている。
備え付けシャワーの頭を撫でながら雉明は頷いた。

「白が……、皆と出掛けて、楽しかったと何度も話すんだ。
 だから、気になってしまって」
「確かにあいつあの時すごい楽しそうだったもんなあ。
 誰から聞いたんかと思ってたけど、そうか、白か」

銭湯というものに自分もいつか出掛けてみたいのだと。
その小さな希望を、あまりに雉明が大事な夢のように語るので。
七代はそれを叶えてやる事にしたのである。

「まあ、丁度冬休みだし暇だし、お安い御用ですけど」

雉明よりも余程満足気にそう言って、七代がタオルで左の腕を洗おうとした瞬間。

「あっ、七代!」

強く手を掴まれた事よりも。
珍しく雉明が大きな声を出した事に七代は驚いた。
何事かと顔を上げる。
七代の手を掴んだまま、雉明は何か真剣な顔をしていた。

「ど………、どうした雉明、何事?」
「七代、後ろを向いてくれ」
「、はあ?」
「後ろを向いて欲しい」
「な、なんで」

唐突で意味不明な言に対し七代はやや怯んでいるのだが、構わず雉明は真剣な表情のまま言った。

「銭湯とは、ひとの背中を洗うもの、なんだろう?
 銭湯に行ったのなら七代の背中を洗わなければと、ずっと思っていた」

情報供給先の常識がそもそもずれていたのだという重要な事実に、七代は今更ながら気付いてしまい。
雉明の抱いていた銭湯へ行く、という夢の中にその行為は必須事項として含まれているのだろうかと逡巡した。



結局。
妙に優しくゆるゆると七代の背中を洗い終えた雉明は、お返しにと七代に髪を洗われていた。

「何故、背中だけを他の人へ任せるんだろう?」

背筋を伸ばして眼を瞑ったまま、雉明が訊ねる。
雉明の頭を泡だらけにしながら七代はシャワーを手に取った。

「そりゃ、背中は手が届きにくいからじゃね……
 タオル伸ばせばひとりで洗えるし、別にしなきゃいけないわけじゃないけどな。
 ほら、流すからちゃんと眼閉じて息止めてろよ」
「、ん」

七代と雉明の足許に、白い泡が流れていく。

「しかしお前の髪も細いなあ、ふわふわで、白と一緒だな。
 白の頭を洗った事は無いけどさ」

雉明は言われた通りに律儀に堅く眼を閉じている。
普段ふんわりしている色の薄い髪が水浸しで、何だか犬のようだと七代は思った。

「……ひとの頭とか洗ったの、初めてだよ。
 ひとの世話焼く事も、世話焼かれる事も、今までにほとんど無かったから」

今までの生きてきた記憶を眺める。
封札師というものになってから、此処に来てから、初めての事ばかりだった。
そう考えれば、或る意味では雉明と己は同じようなものなのかも知れない。
顔を拭い、おそるおそる片眼を開けて、雉明が首を傾けた。

「たのしい?」
「え?」
「おれは、七代と銭湯に来られて本当に楽しいし、良かったと思っている。
 七代はどうなのかと思って」
「、ああ……」

雉明の頬を流れ落ちる水滴を指で拭ってやりながら、七代は笑って応えた。

「そりゃ、俺もおもしろいよ」

言うと。雉明も微笑んだ。

「良かった。ありがとう」
「いやいやこちらこそ」

それからお互いに今度は己の手でそれぞれ髪と身体を洗い、誰も居ない湯船へ浸かる事にした。



雉明は七代を真似て、先刻まで使っていたタオルを畳んで頭に乗せようとしているのだが、なかなかうまくいかない。
ずり落ちるそれを笑いながら七代が助けてやる。

「良かったな、半端な時間だから誰も居なくて。
 ゆっくり出来るだろ。
 肩まで浸かれよ、でないと鬼畜で過保護な眼鏡が来るから」
「めがね?」

それはどんな種類の眼鏡なのだろうと雉明が考えていると、七代は首をだらりと壁に預けて深く息を吐いた。

「俺は温泉ってほとんど行った事は無いけど……
 確かに、疲れが取れる感じがするよな、風呂は」

白い湯気で少し霞む七代の横顔を、雉明は眺めた。

「確か……含まれる成分によって効能がそれぞれ異なる、んだったな。
 湯は温かいから、成分が無くとも血行を促進する所為で身体に良いのかも知れないな」
「そうねえ。
 雉明は風呂、好きなの?」

訊ねられ。雉明は少し視線を漂わせた。

「…………、好きかどうかは、考えた事が無かった。
 普通、だと思う」
「なんだ、銭湯に行きたいって言うから風呂が好きなのかと思ってたよ。
 ただ行ってみたかっただけなの?」

七代は笑ったが、雉明はただ真顔のまま頷いた。

「七代と共に行って、楽しかったと言うのがとても気になって。
 出来れば、おれも、一緒に行ってみたいと思った」

雉明の真摯な眼が七代を捉える。
雉明の抱く夢の比重は、風呂では無く、七代と共に、という部分にかかっていたようで。
七代の胸郭にもゆるりと湯が通った。

ほんの小さな希望を大事に抱くこの男を。
絡め取って、縛って、ひとつの道へ追い込もうとする、その黒い糸を断ち切ったのは七代千馗である。
幾つもの死を看取り、幾つもの生命を礎に眠り、そのたびに悲嘆して遂に己の破滅を望んだこの男の手を掴み、永劫に続く連鎖から引き揚げた。
当初からの目的でもあったし、己の身が贄として必要なのだと聞かされても尚、七代はずっと札を封印するつもりでいた。
周囲の人々が悲しむかも知れない事は勿論、七代の悲しみでもあったけれど。
しかし七代の全ての発端となったこの男が鬼札であり、封印という行為がこの男を救う事にはならないと知った時、七代は封印の道を蹴った。
連鎖を断つ為に、この男ごと全てを消してしまうのも、救いである筈が無い。
とて、花札がこのまま残ればまた、羽鳥の血が泣く事になる。
七代は憤怒した。
何故、捨てねばならないのかと。
捨てられるものなど何ひとつ無いというのに。
憤怒しながら、道を探した。
そして、最も困難な道を選ぶ事になった。
其処にしか己の求めるものが無かったのだから、後悔も不満も無い。

七代はそれを果たした。
成し得たのである。
雉明の、白の、そしてかの楼万黎の手さえ離さずに。
成し得て当然だと七代が思ったそれは、奇跡である。
七代の成し得た奇跡は、今眼の前で、七代の黒い眼を見詰めている。

「…………また、かわいいこと言って」

笑って、七代は少し薄紅色に上気した雉明の頬を撫でた。
奇跡の感触を確かめる為に。
己が偉業を達成したのだと、そんな風に考えた事は無かったが、こうして雉明に触れるとようやく実感する。
ああ、己は、本当にこの男を救えたのだと。
この男がもう、黒い連鎖の中で泣く事は無いのだと。
頬を撫でられて、雉明は少しくすぐったそうに眼を細めている。
頭に乗せたタオルを落ちないように押さえながら、七代はその頬に口付けてみた。
間近に、瞬く雉明の睫毛が動く。
頬はちゃんと湯に温められていて、仄かに温かかった。

そうして七代は、雉明と己の格好が今どうであったのかをふと思い出し、少し胡乱な気持ちになって大人しく上体を退いたのだが。
静かに七代を見詰めたままの雉明が、唇を開いた。

「七代。
 今日は、……………………やらないのか?」

主語の無い雉明の言葉が七代を存分に驚かせる。

「な、……何を?」

雉明は一体何を言いたいのだろう。
続く言葉を予測し、七代は珍しく落ち着き無く次の己の行動についてどうするべきなのかと考えていたのだが、雉明は静かな表情のまま全く違う方向を指差した。

「向こう」

つられて、七代も其方へ眼を遣る。
雉明の指が示しているのは、仕切りになっている壁である。
嫌な予感がした。

「こういう事は………………犯罪行為の一種だと思うんだが。
 しかし、銭湯につきものなら………おれは止めない事にする」
「、雉明」

七代の眼の前が暗くなる。

「覗く、んだろう?女湯を」

七代のこめかみを、熱さの所為では無い汗が流れ落ち。
真顔の雉明を見詰めながら、白への小遣いを半分にするべきか如何かを七代は本気で考えた。





温められた皮膚が、冬の風を跳ねのける。

雉明と七代は揃って湯気を纏いながら、来た道程をのんびりと歩いていた。
七代に買い与えられたアイスに気を取られているので、雉明の足取りがたどたどしく遅い。

そのアイスを隣からひとくち奪って、七代は伸びをした。

「よく浸かっといたから今のところ寒くないな。
 湯冷めするから早く帰った方がいいけど……アイス寒い?」

大事そうにアイスを手にしている雉明が首を振る。

「美味しい」
「それは良かった、やっぱり銭湯から上がったらアイスか牛乳だから。
 ま、オトナなら麦酒だろうけどな」

言って、七代はまた前回の事を思い出した。
牧村久榮がそんな事を言っていたのを。

そしてふと思う。
皆があの時口にしていたのは、楽しいと言っていたのは、何に対してであったか。
それは。
大勢揃ってだから、である。
皆と一緒だったから、である。
だから、白も楽しかったのだ。
雉明が銭湯に行きたいと言うのでとりあえず連れてきてしまったが、あの時のようにとまではいかなくとももっと誰かを誘うべきでは無かったか。
雉明自身は、七代と共に来たかったのだと先刻口にしていたけれど。
今更ながら七代はその事に気付いてしまった。

「、七代?」

突然思索に落ちた七代の様子を見遣り、雉明は不思議そうに首を傾ける。

「…………いや、前来た時はさ、ほんとに大人数だったんだ。
 ものすごい賑やかで……
 まあ、賑やかさの大半は主にひとりの所為だったような気はするけど。
 だから、白も楽しかったんじゃないかなと思って」

溶けないようにアイスを注意深く見詰めながら雉明は頷いた。

「確かに、なかなか無い機会だったと、白は言っていた。
 それが面白かったのだと」
「だよな」
「それが?」
「いや、だからさ、今日も、もっと誰か誘うべきだったのかなと思ってさ。
 冬休みだけど声掛けたら誰か捕まるだろうし。
 まあ、壇とかさ。壇とか」

他に都合がつきそうで尚且つうまく場を丸めてくれそうな人材を思い付けずに、七代は唸っている。

「ごめんな、賑やかさは再現してやれなくて」
  
冬休みはまだ残っている、その間にまた次を考えよう。
そう考え始めた七代の顔を、雉明は不思議そうに見詰めた。
雉明が眼を離した隙にアイスが溶けて指を伝ったが、雉明は視線を戻そうとしない。

「、ああ、雉明、アイス溶けてるし、」
「おれはこれでいい」

ポケットから街中で押しつけられたティッシュを取り出そうとした七代に、雉明の言葉が掛かった。
本当に静かな雉明の視線と七代の視線がぶつかって、結ばれる。
七代が意味を問い返す前に、雉明は言葉を継いだ。

「『七代と一緒』で、そしてちゃんと『楽しかった』。
 おれの夢は、きみが正しく叶えてくれた……きみは、いつもそうだな。
 おれはとても嬉しい。
 本当に有難う、七代」

言葉の通りに。
雉明は、心の底から本当に嬉しそうに微笑んだ。

「……………………ふたりでも良かった、って事か?
 大人数で騒がなくても?賑やかじゃなくても?」

七代が返しても雉明は微笑したまま。

「きみの信じる愛おしい人たちが集まってあの湯に入るのも、
 きっと、 間違いなく楽しいんだろう。
 その賑やかさというものに、興味が無いわけじゃない。
 だが、一番大事なのは、きみが傍に居るという事だから。
 それさえ叶えば、おれは嬉しい」

雉明にとって大事なのは、白の味わった楽しさの再現ではなく。

「言葉としては、ふたりでもよかった、というより、ふたりがよかった、かな。
 叶えてくれて、有難う」

微笑んで、礼を繰り返す。
七代は。
先刻、己が洗ってやった雉明の頭を撫でた。
ふわふわとした柔らかい手触りは、雉明の浮かべる微笑に何となく似ているような気がした。

「またそういう事を。
 …………お前は、大袈裟なんだって」

何かを誤魔化すように、大きく息を吐き落とす。

「そうかな」
「そうだよ、お前が俺とふたりでいいってんなら、いつでも来れるだろ銭湯なんて」
「、また、行ってくれるのか?」
「お前が行きたいなら幾らでも」

七代の言葉に、雉明は驚いたように何度も瞬いている。
小さな事にひとつひとつ喜んで嬉しそうに微笑むこの男の望みを、出来る限り応えてやりたいと七代は思う。
どうやら雉明の望みは七代自身に直結しているようなので。
叶えられるのは当然、七代しか居ないのだから。

この男がもう、悲嘆に暮れる事の無いように。





白へこの日の顛末を嬉しそうに語り、そしてあまりに語り過ぎた所為で、羨んだ白に雉明が叩かれるのは、帰宅してしばらく後の事。















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雉明のヒナっぽさの匙加減が難易度高過ぎる。
一応かなり十話の会話見たりとかしたんですけど……

うちの七代はオカシラと風呂覗いたくせにミギーに肩まで浸かれと言われたらしいですね
果報者としか言いようがない。

白と雉明の微妙な仲の良さがすきです。




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