melancholia//サイトの更新履歴兼、その時々のプレイゲーム日記、二次文章など。
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2010/05/13 (Thu) 鬼祓師小話 / 主壇主でアレ


三話くらいの昼休みネタ。

今回もうすら寒いですが、うすら寒さに拍車がかかっています。
壇、おたんじょうびおめでとう。



一歩進んでみた小話です。



主壇主小話 『ざまあみろ』





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『ざまあみろ』








十月の下旬である。
加え、今日は厚い雲が陽光を遮っているので漂う空気が特に冷え込んでいた。



鴉乃杜学園校舎屋上のコンクリートの上に昼食を広げながら壇燈治は、秋が冬に移ろうとしているのだと一人ぼんやりと考えていたのだが。
そこで、がちりと扉が開き。
七代千馗がやってきた。

「………………七代」

不思議な黒い色の眼に強い意志を纏い、様々なとんでもない怪異をものともせずにその掌で払い去った転校生。
壇が失くしてしまった熱を、その胸に抱く男。

七代は。
扉の前に立ったまま、パンを齧る壇の様子をちらりと一瞥した。
その温かくない視線の意味を考えながら壇は、七代の左手に握られている購買のビニール袋を見遣る。

「、なんだよ、昼飯か?」

壇がそう言うと、七代は僅かに眉根を寄せたまま首を傾けた。

「今は、昼飯を食う時間だろ?」
「まあ、そりゃ、そうだが」

元々、物凄く愛想のいい男では無いけれど。
今、壇の眼の前に居る七代千馗が本当ににこりともせず、むしろ眉をひそめているので、何か怒らせる事でもあっただろうかと壇は己の行動を思い起こしていた。
出会った当初は七代のひととなりを知りたくて挑発めいた事を言い、多少はこの男を怒らせた事もあったけれど、最近は壇の方にそういう気が無いので平穏で良い友人関係を保てていた、筈だった。
さて、自分は何か知らぬ間に七代の意に染まぬ事を仕出かしたのだろうか。

「お前まで此処で食う気か?」

七代が壇の隣に腰を下ろしたのでそう訊ねると、七代はまた眉を寄せた。
七代が袋から取り出しているのはカレーパンである。

「…………まで、って何?」
「いや、だって寒いだろ。
 もう十月も終わりだぜ、今日は天気もあんまり良くねえしよ」

そういえば、夕方から雨が降るかも知れないと朝、穂坂弥紀が話していたのを壇は思い出す。
己は風邪などあまり引く方では無いから構わないが、この男にはやるべき事がある。
とても、重く、困難な使命が。
だから、七代千馗は自分の身体を大事にするべきなのだ。
それに。

「それに…………
 知ってるか?お前と昼飯食いたいっていうやつが結構居るんだとさ。
 俺も詳しくは知らねえけどな。
 そんな人気者がこんな寒いとこに居ちゃ、勿体無えだろ?」

七代は壇とは違うのである。
筋が通らぬと言っては拳を振るう、己とは。
だから、己のように、こんなところに居るべきではないのだ。

壇は正直な気持ちをそのまま、口に出して言ったのだが。
その言葉に最後まで耳を傾けた七代は、先刻よりも苦々しそうな顔で嘆息した。

「で……………………?」
「は?」
「で、何が言いたいの。
 俺が此処に居ちゃお前は迷惑なの?どっか行けって事か?
 それならそれで場所変えるけど」
「、いや」

明らかに。七代の機嫌は先刻よりも悪くなっている。
気遣いがうまく伝わらなかったらしい事と七代の声音に圧されて、壇は視線を泳がせた。
そもそも何故この男が最初から怒っているのかという理由さえ、壇には全く見当がつかない。

「そういう事じゃなくてだな、」
「俺にそう言うならさ、
 そんな寒いとこで、じゃあなんでお前は飯を食ってるわけ、ひとりで?」
「それは」

問われて言葉に詰まる。
一人で居る方が楽だし、己が教室に居ると同じ組の生徒たちに妙な威圧を与えてしまうから。
答えは簡単だったが、それをそのまま言葉として吐き出すのはほんの少し、勇気を必要とするようで。
壇は、一拍、沈黙した。
七代があの黒い眼で己の表情を見詰めている事に気が付いてはいたが、壇はじっとコンクリートへ視線を落とし続けて七代のそれから逃れた。

「……………………まァ、俺が居ると妙に怖がる連中も居るって事だよ。
 昼くらい、気楽に過ごしたいだろ?お互いに」

視線を絡ませずに壇がようやくそう答えると、七代は大袈裟なくらいに大きな溜息を吐いた。

「な、何だよ?」

それがあまりにあんまりだったので壇が問うと、べっつに、と七代は素気無く言い、カレーパンの袋を開封した。
話は終わりだ、という事なのだろう。

一体、なんだというのだ。
壇は内心頭を抱えた。
七代千馗は、他人に当たる事をしない男である。
七代が壇の前で腹を立てているとすれば、それは間違いなく壇が原因なのだ。
だから、今七代がこうなっている要因は壇の中にある筈なのだが、厄介な事に、七代はそれを明確にする気がどうやら無いらしい。
壇は神経細やかな方では無いので、腹が立ったというならそれをそのままはっきりと口に出してくれなければ判らない。
言われれば、詫びるなり反論するなりやりようもあるというのに。
しかしそこまでこの男を怒らせているのに、理由について己自身全く心当たりが無いという現状に壇はやや呆れもする。
そんな己だからこそ、怒らせてしまったのかも知れない。
思い切って此方から理由を訊ねるべきだろうかと考えながら、壇はとりあえず、買っておいたサンドイッチをひとくち齧ったのだが。

「、痛って」

マスタードが口腔の傷に染み、思わず壇は顔をしかめた。

「何?」

ペットボトルの紅茶を飲んでいた七代が不思議そうに壇を見る。
ああ少し表情が和らいだ、とそれを見遣りながら、頬のあたりを擦った。

「ん、ああ…………、朝ちょっと、いざこざに首突っ込んだら一発もらっちまってな。
 そん時、口ん中、切ったみたいでしみるんだよ」

言うと。七代は呆れた顔で肩を竦めてみせる。

「なんでわざわざ首突っ込むんだよ……」
「しゃあねえだろ?」
「しゃあなくねえだろうが。
 首突っ込むのはお前の趣味らしいからもう諦めるとしても、怪我をするなってんだよ」

今度は壇が呆れた。

「お前……、喧嘩はしてもいいけど、ひとつも怪我をすんな、ってのか?」
「そう」
「無茶言いやがんなァ」
「何が無茶だ」

七代は真面目な顔でそう言い放っていたのだが。
ペットボトルを置き、じっと遠慮の欠片も無く壇の顔を眺めていたかと思えば、突然僅かに表情を変えた。
一体何を考えているのだろうと、七代千馗という男の思考回路を読めぬ壇は気が気では無い。

あれは、なんだろう
何かを、思いついたような、あの顔は

先刻の原因不明な怒りが何となく霧散しつつあるのは良いけれど。
そう考えているところに、七代は、自分の身体を壇の方へ向き直らせた。

「何処を切ったって?」

相変わらず、この男の声は風に遮られる事無くよく響く。
壇はとりあえず、サンドイッチを置いて答えた。

「だから、この…………ほっぺたの内側んとこだよ」
「どれ」
「は?」
「見せて」

言いながら七代は膝を立てて、既に壇の顔を覗き込んでいる。

「、はあ?」
「見せろって、何処?右?左?」
「み、右…………、ていうか、痛いってお前!」
「うるさいな、黙って口開けてろ」

ひどい力で壇の顎を掴み、七代は眼を眇めて歯医者よろしく壇の口腔を凝視した。

「……見えないねえ、もうちょっと上向いて」
「は、がが」

押さえつけられた壇は必死に七代の腕を引いて退けようとするのだが、その手は容赦無く払い除けられてしまう。
この男は時々、とんでもない事や信じがたい事を平気でする。
いっそ七代の気の済むまで観察させてやるのが最も被害の少ない方法なのだろうか、どうなのだろう。
口を開けたまま壇がもっと抵抗するべきかどうかについて逡巡していると、壇の鼻先で七代が、ああ、と言った。

「あれかな?
 あー、まあ、確かに切れてるかな……そんなに大きくないけど」

言いながら。七代は其処を指で触れた。

「、ッ!」

痛かった、というよりも。
壇の精神を襲ったのはとても強い驚愕である。
まさか、口腔を指で触れられるとは。
僅かに舌にも触れた他人の皮膚の感触が、後を引いて残る。
しかし、触れた当の七代は微笑さえして。

「ほ、まへっ……」
「ああ、痛かった?
 けど判った、そこだな」

至近距離に、笑みに細められる黒い眼が見えた。

「そのまま。
 口、開けといて」

そう呟いた七代の声音は低く。
言われなくても先刻からずっと開け放しだと壇は思ったが、返事が出来る状況では無い。
もっと本気を出して抵抗した方がいいのかも知れない。
そう思い始めた壇は友人の肩に手を掛けたのだが、近くで見た七代の眼の色が、本当に不思議な色をしていたので。
ふと力が緩んでしまった。
七代千馗の眼は秘法眼、というそうだ。
それを持つこの男には、世界はどんな光景に見えているのだろう。
壇には見えぬものも、見ているのだろうか。

そんな壇の視線を一瞬だけ受け止めて、それから七代は、ふわりと半分瞼を閉じた。



更に近付く七代千馗の顔を壇はずっと見詰めてはいたが、その結果の事を、欠片も予測出来ていなかった。
己の口腔の粘膜に、同じ感触の温い何かが触れた時でさえ、壇はその正体についてよく理解出来ずにいた。
ぬるりと。
ほんの少し、紅茶の味のするものが壇の奥歯に触れ、それから口腔の傷にぺたりと張り付いた。
そして滑る。

「ッう、」

痛みが細く走る。
壇の鼻梁のあたりに冷たい何かがかかり、それが七代の髪だという事に気が付いてようやく、己が何をされているのかという事についても脳がじんわりと理解し始めた。
今、己の口腔の中に在るのは、この男の舌で。
己は頬の内側の傷を、舐められている、のである。
七代は手袋をしている方の手で変わらず壇の顎を掴み、もう一方の手を壇の頭に置いて、首を固定させていた。
己のものでは無い舌の感触。
舌同士が擦れるたびに腹の底に湧き起こる感覚。

「ん、」

痛みの所為なのか別の何かの所為なのか、壇の意識外のところから呼気のような声が漏れた。
七代が間近で瞬きをしたらしく、顔に睫毛の先が擦れてくすぐったい。
ぐるぐると、現状に対する把握と理性と疑問が壇の背で渦巻いている。
視界の隅で渦の巻く気配を感じてはいる。
けれど。壇は何ひとつ行動を起こす事が出来なかった。

己の口腔の中のみで響く僅かな水音。
粘膜が接着するたびに起こる、紛れもない快感。
そう、これは。
快楽、というものである。

ゆるりと熱が首の後ろに集まり、涙で視界が滲むように、壇の意識が何かで霞んだ。
快い波に流されそうになる。
今掴んでいる七代の腕を此方に引き寄せて、自分からもっと、貪りたくなる。
七代の口腔にも己の舌を触れさせたくなる。

けれど。

傷口の痛みが、壇の眼を突然、醒まさせた。
快楽に緩んだ意識が、急激に現実へ引き戻される。



「…………ッ、し、……ち、だい!
 いいかげんにしろっ!」

肩を強く押し返された七代は大人しく引き。
舌を出したまま笑ってみせた。
先刻まで、壇の口腔を撫でていた舌先。
逸らそうとしても、壇の眼はその色を追ってしまう。

「お、まえは、なん………、」
「傷は舐めとくに限るだろ?
 早く治してやろうと思ってね」
「、ば、」

だからといってそんなところを舐めるやつがあるか

そう言い返そうとしたが、出来なかった。
とんでもない事を仕出かしたというのに、七代は普通に、微笑んでいる。
やはりこの男の思考回路は計り知れない。

「痛かった?きもちよかった?」
「ふ、ざけ、」

笑いながら七代は立ち上がって、扉に指を掛ける。
冷たい風に晒され、七代の黒い髪が流れていた。

「…………お前がさあ、あまりにもつまんない事を言うからだろ」

七代の声音が少しだけ変わる。
必死に呼吸の仕方を思い出しながら、壇は七代の顔を見詰めた。
七代の言う、つまんないこと、というものの心当たりが無い。
壇は本気で困惑した。

「だから、ざまあみろだよ。
 あんまりエロイ声出すなよな」
「だ、誰がっ」
「今度つまんない事言ったら、教室でやるからな。
 覚えとけ」

恐ろしい事を微笑みながら言い。
それが本気なのか如何かと壇が考え始めたところで、七代はふと振り返った。

「あ、カレーパン忘れてた…………
 まあ、いいわ、それお前にやる。
 しみるかも知れんけど、舐めたんだからすぐ治るだろ。
 俺はもう食ったからな……御馳走様、壇」

最後まで壇の神経を逆撫でして。
七代はひとりでさっさと屋上を後にしてしまった。





扉の閉まる音と、遠ざかる七代の足音。
それらを風の音と共に聞きながら、壇は灰色の空を仰いだ。
空模様は確かに眼に映ってはいるけれど、それがどんな色なのか、今の壇には判らない。

「……………………何が、エロイ声、だ、あの馬鹿」

くぐもった水音が。滑る感触が。壇の中から消えない。
快楽の生んだ熱も。

盛大に溜息を吐きながら、眼を閉じる。

「…………お前こそ、エロイ顔すんな、っての…………」



とりあえず壇は、午後からの授業と、一切の思考を放棄する事に決めた。














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あの時の壇をちょっと殴りたい衝動に駆られたので。
そして急に、口の中切ってる、とか言うから。
ネタにするしかないだろうと思ってました、一周目から。

チューはこんな感じですけど、突っ込む突っ込まないの話になると、壇主になります。
突っ込まれる壇はなんか想像出来にくいんだ…




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