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2010/04/27 (Tue) 鬼祓師小話 / 壇と七代


主壇主?

いや曖昧なのが嫌な方には済みません、という中身です。
ネタバレはあんまり…無いとは思います。
例の体育の時間ネタですけども、そこまでは。

そんなものでよろしければ追記から。




主壇主小話 『しかしそれは見えない』






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『しかしそれは見えない』







今にして思えば、どうして受け取ってしまったのだろう。

壇燈治は誰も居ない教室の隅で、己の掌に在る淡い色の封筒を見詰めていた。






普段ならもう帰宅しようという時間だった。
けれど、現代国語の小テストが良くなかった壇は明日また再試験を受ける事になっていて。
その為の勉強を七代千馗に見てもらう予定があったのである。
近頃仲が良いのだから、と言う担任教師羽鳥朝子からの屈託の無い提案を、七代は軽く承諾した。
七代千馗という男は授業の進み具合の異なる学校へ来て早々、ほぼ全教科で好成績を上げているらしいと飛坂巴が感心していた。
七代曰く、べんきょうはおもしろいもの、なのだそうで。
壇にしてみれば全くの理解不能である。



牧村久榮に用があるというので、七代を教室で待っている間に、それは起こった。

女子生徒二人に、話しかけられたのである。
壇はそのうちの、付き添いらしい女子生徒の方にしか見覚えがなかった。
もうひとりの方は恐らく他の組なのだろう、同じ組の女子生徒でさえ全て名前を把握しているわけではない壇にとって他の組の生徒など本当に見た事さえない。
壇と同じ組の女子生徒に促され、もうひとりの女子生徒が俯きがちに何かを壇へ差し出した。
封筒。
これは、と思う。
壇の脳裏に、先日の飛坂巴の言葉が蘇っていた。

しちだいくんに

女子生徒は小さな声でそう呟いた。
これが決闘状でない事は当然、壇にも判っていた。あの時のように危険な代物でもないだろう。
ただ純然たる、ラブレター、という類のもの。
それを七代千馗に渡せ、という。
こんな類の頼まれごとをした事のない壇は内心困惑していたのに、言われるまま、それを受け取ってしまった。
その時に己が何か返事をしたのか、何を言ったのか、覚えていない。
ただ、渡す時には壇を恐れているようだった女子生徒たちは壇が断らなかった事で何故か突然気安くなり、七代千馗についてあれこれと訊ね、そして騒ぎながら去って行った。
その背を見送りもせず。
壇は黙って、封筒のおもてだけを見詰めていた。




窓際の一番後ろ。
己の机に腰掛けて、封筒の上に溜息を吐き落とす。
耳の奥に残る女子生徒たちの言葉の断片が繰り返し再生されていた。

 『こないだの野球の時』
 『すごい格好良くて』
 『やさしいし』
 『弥紀も巴も付き合ってるわけじゃないって』

この手紙に書かれている内容は、見るまでもなく、七代に交際を求めるものだろう。
先日体育の時間でやった野球の試合がきっかけだと言っていたが、あれはほんの二、三日前の事である。
あんなもので、急に、好きになってしまうものなのだろうかと壇は思う。
普段の七代とそう話した事も無いのに。そこだけを見て。それだけで。
人を好きになる事も、交際をするという事も、壇には何処か遠い出来事だった。
けれど、それらは果たしてそれほどに簡単なものなのだろうかと不思議に思う。
それとも、壇の眼にそう見えるだけで、彼女にとっては至極真剣なのだろうか。
こんな手紙を寄越すくらいなのだからそれは或る程度、勿論、真剣なのだろうとは思うのだけれど。
どうにも、壇の思い描くものとは違っている気がした。

「……なんで、本人に直接、渡さねえんだかな」

嘆息しか出てこない。
手紙すら本人に渡せないのに交際など出来るのだろうかと思う。

窓の外を眺める。
夕刻。
やわらかく朱を帯びた陽の光が校庭に降り注いでいた。
それを眺めながらぼんやりと気付く。
友人に勉強を教えてもらう為にひとり教室で待っているという己の状況が、壇燈治としていかに有り得ないのかという事を。

今までは喧嘩に明け暮れ、教室にはほとんど寄りつかなかった。
興味が無かったし、己が居ても他の生徒たちの迷惑にしかならないと思っていたから。
けれど、今は。
こうして授業を受け、試験も受け、そして友人を待っている。
これは本当に壇燈治なのだろうか。
己の上にこんな変化がもたらされるとは、予想もしていなかった。
七代千馗。壇を変えた男。

そして、壇の居場所でもある。

もう一度、封筒を見た。

これは、ようやく壇の得たそれを、壇から奪うのだろうか。

「……」

危うく握り潰しそうになって、寸手で止める。
鼓膜の奥に残る女子生徒の高い声音が壇を嘲笑しているような気がした。
何を今更、と。
お前には過ぎたものなのだと。
己の鬱積を正当化して他へぶつけてきたお前にはそんなもの得る資格など無いのだと。
その声に、壇は眼を閉じる。
それを否定はしない、その通りだと思う、己が一番筋を通していなかった。
けれど。
一度触れてしまえばどうしても手放し難い。
七代千馗の傍に居る事はひどく心地がいい。

俺がやっと手にしたものを、奪うってのか
お前にはともだちも居場所もあるのに
俺から、尚、七代を

七代がこの手紙に対し、どうするつもりであるか、壇には判らない。
けれど。

けれど、これさえ、なければ。





がらりと扉が開いて、ぺたぺたと軽い足音がした。

「いやー……、こんなに遅くなると思わなかった、悪かったなあ壇。
 せめて食堂に居ろってメールでも送れたら良かったんだけど、送れる隙も無くて……
 ほんと牧村センセイは人使いが荒い、というか、うまい」

やれやれと首を回しながら歩いてくる。
七代千馗。
名を呼ぼうとして、壇は友人の名を口にする事が出来なかった。
喉につかえたまま出てこない。
ゆるりと壇の傍へ立った七代は、壇の眼をじっと見詰め、そして表情を消した。

「……………………どうした?」

低い声音。
七代の言葉で、壇は己が今どんな顔をしているのかという事を少しだけ知った。
もっと己の感情をうまく制御出来れば良いのに、と思う。

「…………俺、変な顔、してるか?」

笑ってみようと思ったが、口の端が震えただけだった。
近い位置で壇の顔を覗き込んでいる七代の眉間に皺が入った。

「してるから訊いてる」
「そうか。そうだよな」
「お前が持ってるその手紙と、なんか関係あんの?」
「………………、やっぱりお前………、天才かもな」

やや形の崩れた淡い色のかわいらしい封筒を、壇は当初の役目通りに七代へ手渡した。
七代は不審気な顔をしながらもとりあえずそれを受け取って眺める。

「……………………わざわざ、手紙にしなくてもさ、」
「?」
「今、此処で直接言えばいいだろ?」
「いや、」
「まあ、お前がわざわざ書いた文面ってのも興味あるけど」
「………………なんで俺がお前にそんな手紙を書かなきゃならないんだよ」

壇は脱力したが、七代はおかしな事を口にしながらも表情を緩めなかった。

「じゃあ、誰が書いたんだ?」

何故この男は妙に詰問する調子なのだろう。
壇の視線が自然と七代から逸れて逃げる。

「…………知らねえよ、俺だって名前なんか。
 顔も多分見た事無い。
 頼まれただけだよ、お前に渡してくれ、ってな」

言ってから。
俯いて、壇は、意を決した。

「七代」

名を呼ばれた男はじっと壇を見詰めている。
ああ、この男の中にあるものは本当に揺るがない。
己とは違う。
それが壇には何処か強く光輝いて見えた。

「お前は、俺を、殴っていい。
 俺はお前に詫びなきゃならない。
 悪かった」

その傍らに、後ろめたい黒いものを腹に抱えている半端な男が立つ事を壇は許せなかった。
だから、告げた。
脈が強く胸で跳ねて、それから全身を急いで巡っていく。

「…………俺は、
 お前宛てのその手紙を、…………捨てようと、した。
 破って、ゴミ箱に。
 お前に宛てられた誰かの気持ちを、だ」

七代は、壇の告白を静かに聞いた。

「……捨ててないじゃん。
 手紙はちゃんと此処に在る」

かさり、と手紙を壇へ掲げる。

「お前の来るのがもうちょっとでも遅かったら、本当に捨ててたよ。
 今、此処に在るかどうかは問題じゃねえ。
 心の中ではもう、捨ててたんだ。一緒だ。
 だから、お前は俺を殴るべきなんだ」

腕組をしながら聞いていた七代は、壇の切迫した声音に苦笑する。

「…………やっちゃうのと未遂なのは、ぜんっぜん、違うけどね。
 そんなんじゃ殺人犯がどんだけ増えるんだって話だよ。
 それよりも…………、なんで、捨てようと思ったのかが気になるな、俺は」



俯く壇の肩に、七代の掌が触れた。

「その子の事がきらいだった?
 頼まれた事にムカついた?」
「ちがう」

ただ、唯一手に入れた居場所を取られたくなかった

もし七代が誰かと交際する事になったら、壇と過ごす時間は確実に減るだろう。
男の友人よりも女の恋人を優先するに決まっているから。
それを想像すると、自分でも驚く程、悲しくなった。
だから。
なんと醜い感情だろう。
なんと己は下らないのだろう。

七代の掌が滑り、壇の首を撫で、頬を撫でた。
温い温度。
それは、七代の傍らに居る時、壇の感じる心地良さにとても似ている。

「そうじゃなくて、」
「壇」

ふんわりと。七代は俯き続ける壇を抱き寄せた。

「こないだ…………、お前、訊いたよな、誰か好きな子いないのかって。
 俺はいないって言った。
 そうだよな?
 今はそういうの考えてないって」
「けど」
「お前は、俺の言う事を信じないの?
 俺の言った言葉以外を信じるの?」

なあ、壇

七代は、封筒を、手から離して机に置いた。

壇の顔を上げさせて、至近距離に視線を結ぶ。
秘法眼と呼ばれる七代の黒い眼の中に、情けない顔をしている己自身がいた。

「七代」
「お前が俺の言う事を信じない、信じられないって言うならさ…………
 俺は、どうしたらいい?壇。
 お前に対して、俺は、何をしたらいい?」

言って、両の腕を大きく広げてみせる。
その七代の手を引き、壇は、友人の身体を抱き締めた。
己の得た居場所が今此処にちゃんと在るのだという事を確認する為に。
強く。強く。
壇に抱き締められた七代は、ほふ、と、やや苦しげに空気を吐き出しながら、壇の背中をあやすように撫でた。

「…………これで、いいのか?」

七代の肩口に顔を埋めて頷く。

「ああ……………………、悪い、ちょっと、しばらく…………
 今だけ、このまま」
「お前がそう言うなら」

七代が軽く壇を抱き返す。

「ごめん、七代。
 俺は最低の男だった」
「お前がどうしても謝りたい、詫びたい、殴って欲しいって言うならさ、
 それは相手が違うんじゃない。
 俺がその子に断りに行く時、お前も一緒に行くか?
 コイツを取られたくなくてあんたの手紙を捨てようとしましたごめんなさいって」
「…………お前、性格、悪ィなあ……」
「その男に惚れてるのはお前じゃないの」
「、そ、こまでは言ってねえし、そういうのじゃねえし」
「あらら、そう?」



壇は本当に馬鹿だなあ



耳許で笑う七代の声は、恐ろしく温かくて優しかった。
















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またこのネタをやってしまった。

ペルソナでもやりましたね……

壇自身はあくまでも友情のつもりです。少なくとも今は。



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